更新日:2023年03月28日 08:57
ライフ

親子ともに発達障害を疑われ…不安とどう向き合う?

ADHDの女性は生きづらい?

 佐藤先輩のように、ADHDの傾向を持つ女性はとても生きづらさを抱えやすいと僕は思っています。多動性や衝動性の強いADHDにとって、専業主婦という生き方は非常に苦しい生き方を強要するものとなるからです。  たとえば、ADHDの持つ「飽きっぽさ」は日々のルーティーンワークとの相性が最悪です。また、明るく活動的な性格は、おしとやかさを求める日本の女性像ともマッチしにくいのです。加えて彼女は発達障害のお子様の子育て、理解のない夫の発言がありました。こうしたいくつもの条件が重なりすっかり元気をなくしてしまっていたようです。 女性光武「今の先輩が置かれている状況はとてもきついと思います。ストレスを感じている環境から離れるという選択肢を考えてもいいんじゃないですか?」 佐藤「というと?」 光武「僕の場合、離婚をきっかけに明るくなれたんですよ。今思うと、大きなストレスだったのかなって思うんですよね。あの環境は。それに、家事をやる余裕がないなら、今は外注サービスだってあります。全部を抱える必要もないんです。できないことはアウトソーシングしちゃうことだって大事ですよ。無理に自分を追い込んでも誰も幸せにならないですから」  彼女はきょとんとして僕を見つめています。 佐藤「そっか、わたしってそんなに追い詰められていたんだ。冷静に自分を見られていなかったよ。うん、娘の子育てのこと、そして私の病気や障害のこと。親も含めて夫にもきちんと話してみようと思う。それで、もっとひどい言葉を言われたら、そこから逃げることにするよ。こんな簡単なことになんで気付かなかったんだろう?」  少し先輩の顔が穏やかになったような気がしました。 佐藤「克君。高校の時から変な子だったけど、そのぶん苦労したんだね。あのときは克君にこんな話をするなんて夢にも思わなかったよ」 光武「僕も、先輩の話をカウンター越しに聞くなんて想定外もいいところですよ!」 佐藤「ふふふ」 光武「ははははは」 佐藤「また、夫と話してここに来てみるよ。次は夫も一緒に来てもいいかな?」 光武「もちろん!ぜひ2人でいらっしゃってくださいね!」 佐藤「うん、しっかり話し合って二人で飲みに来るよ。せっかくだし、あと1~2杯くらい飲んでおきたいな。次はウォッカベースで何か作ってくれる?」 光武「かしこまりました。」  今夜もBRATsは盛況です。次にここを訪れるのは読者の皆さんかもしれませんね。  本日もご来店まことにありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。 *お客側の登場人物はプライバシーの問題から情報を脚色して掲載しています。 <文/光武克 構成/姫野桂 撮影/渡辺秀之>
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

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