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九州南部の豪雨、避難指示が出ても99%は逃げなかった大問題

西日本豪雨から1年で再び……

 途切れることなく次々と現れる「線状降水帯」による記録的豪雨が、今度は九州南部を強襲した。  6月28日の降り始めからの総雨量は宮崎県えびの市で1089.5㎜を記録。鹿児島県鹿屋市で901㎜、熊本県湯前町でも612㎜に達した。7月3日には、南さつま市大浦町を流れる大王川の堤防がおよそ20mにわたって決壊。鹿児島市内を流れる和田川の一部も氾濫し、鹿児島市や曽於市では自宅にいた高齢者が土砂崩れで生き埋めとなった……。鹿児島県によると県内34か所で土砂崩れが発生。鹿児島市内全域の59万人超に避難指示が出されたという。
西日本豪雨

土砂が流れ込み崩壊した民家から担架を運び出す消防や警察、自衛隊の隊員たち=鹿児島県曽於市で2019年7月4日撮影 毎日新聞社/アフロ

 奇しくも、5日は「平成29年九州北部豪雨」から2年、翌6日は「平成30年西日本豪雨」から1年をそれぞれ迎えたが、なぜ、これほどまで「記録的」な豪雨となったのか? 天気予報士の柴本愛沙氏が話す。 「東京都の7月全体の平均的な雨量が約1500㎜なので、まさに『記録的』な豪雨と言っていい。この時季は梅雨前線が停滞するので、ただでさえ雨が降りやすいところへ、フィリピン近海に台風のもとになる熱帯低気圧があり、ここから暖かく湿った空気が大量に流れ込んできてしまった。地球温暖化の影響もあって、日本近海の海面水温が高くなっていますが、今回、この湿った空気が、九州地方に張り出していた太平洋高気圧に沿って入ってくるなど、悪い条件がいくつも重なったことで、西日本豪雨や九州北部豪雨のときと同じような線状降水帯がいくつも発生したのです」  元来、九州の地盤が「水」に弱いことも、多くの土砂崩れを誘発した原因の一つのようだ。災害リスク評価研究所の松島康生氏が話す。 「大規模噴火による火砕流が長年にわたって堆積し、九州には水が浸透しやすい『シラス台地』が広がっています。鹿児島県も地質が火山灰なので、水を貯めておく保水力が弱く土砂災害を起こしやすい。山肌の部分が崩れ落ちる表層崩壊は、山に降った雨が木の根っこの辺りまで浸透することで起きるが、もっと深い地層の境い目まで水が到達すると、岩盤ごと地滑りを起こす大規模な深層崩壊に繋がってしまう……。シラス台地は深いところで土砂が抉り取られやすいため深層崩壊を起こしやすく、再びまとまった雨が降ると危険度が一気に増すのでしばらくは注意が必要でしょう」  3日、鹿児島市内にあるJR南鹿児島駅近くの斜面が、高さ約20m、幅約10mにわたって崩落した。
西日本豪雨

写真/時事通信社

 幸い、線路との間に防護フェンスが設置されていたことから大事には至らなかったが、鹿児島市電は4日夕方まで区間限定で運休となった。 「市内に住んでいる息子が『ウチにきな』というので、雨がすごかった日だけ避難しましたが、すぐに帰ってきました。ここら辺は、市が『急傾斜地崩壊危険箇所』に指定していて、過去に大雨で崩れたこともあったので慣れているんです。だから、近くの小学校に避難する人もいれば、雨のなか大変なのでずっと家にいる人もいますよ」  崩落のあった崖上の新興住宅地に住む60代の女性はこう話してくれたが、今回の九州南部豪雨においては、行政の対応も迅速だったため被害を最小限に抑えられたことは評価されていいだろう。ただその一方で、気がかりな点も……。
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実際に避難したのが全体の0.3%
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