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『ギター・マガジン』YouTubeの時代に“攻め”の編集方針で完売続出

 雑誌の衰退が叫ばれている中、確かな取材力を武器に、売り上げを伸ばす専門誌もある。今回は今注目の専門誌『ギター・マガジン』を直撃取材。
ギター・マガジン

『ギター・マガジン』

特集主義で再ブレーク!圧倒的なボリュームで完売続出

 創刊から40年の歴史を誇る老舗雑誌『ギター・マガジン』は、’16年に大胆リニューアルを敢行した。布袋寅泰やジミ・ヘンドリックスなどの有名ギターヒーローを表紙にして、楽譜や奏法解説を掲載するのが定石だったところを、100ページを超える「大特集主義」に舵を切った。特集の中身は「モータウン」「歪みペダル」「和モノAOR」などマニアックなものも多い。ところがこの方針転換が功を奏し、完売が続出している。 「契機となったのは、’17年4月号の昭和歌謡曲特集。これが売れたことで“いける!”という手応えが掴めましたね。この号で取り上げた矢島賢さんや水谷公生さんというのは、ギターヒーローというよりは裏方の職人的存在。でもプレー自体はめちゃくちゃカッコいいから、“知る人ぞ知る”止まりではもったいないという担当編集者の熱い思いがあったんです」  雑誌の世界において、大特集主義は取り上げる内容によって部数が大きく上下する傾向がある。『ギター・マガジン』の場合、10代から60代の読者まで満遍なく受けるテーマが強いそうだ。 「例えば最近の大学生は、お父さんが車の中で大瀧詠一さんや山下達郎さんを聴いていたという人が多い。今はYouTubeの時代だから、若い人が昔のものを古くさいとは考えないですし。そういう土壌もあって、シティ・ポップやAORの特集の人気は鉄板なんです」  月に1回行われる編集会議は、実に5~6時間にも及ぶ。編集者はそれぞれ音源を持ち寄りながら、「カッコいい演奏」についてプレゼンし合うのだという。その際、読者からのアンケートはがきを参考にすることはほとんどない。自分たちの感覚が、世の中のギタリストと乖離していないという絶対的な自信があるからだ。 「最近は速弾きなどの派手なリードプレーよりも、ファンキーでグルーヴィーなカッティングがトレンドでしたが、その流れも一段落しそうな兆しがある。そこで新たに注目されそうなのが、オルタナやシューゲイザー、ポスト・ロックなどのムーブメント。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどに影響を受けた、不穏な空気感を持つバンドが増えている気がします」

’19年9月号では、再結成された伝説のバンド「ナンバーガール」の魅力を130ページの大ボリュームで解説。弦高や重量など詳細な数値まで記載する徹底ぶりは圧巻と言うほかない

 ’80年代から何度も取り上げているエリック・クラプトンやジミー・ペイジの特集を今さらしたところで、新たな発見はそうそうない。読む側も作る側も「もういいんじゃない?」という気分になっていると編集部は分析している。だからこそ、新しい切り口を開拓する必要があるのだ。 「ロックやギターが下火と言われることもありますけど、アニメ『けいおん!』や『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の影響で若い女性プレーヤーは確実に増えているんです。だけどそういった特集を組むためには、若いライターや編集者が育っていない。そのへんは明らかに我々の課題だし、納得いっていない。まだまだ改良すべき点はいくらでもありますね」  現状打破の精神を胸に、“攻め”の編集方針は続きそうだ。

▼歌は世につれ……ギター業界3大ニュース

1.「脱・リード偏重主義」による6弦構造改革 長い間、ギタリストにとって間奏部分のギターソロこそが最大の見せ場とされてきた。しかし、近年はSuchmos的なグルーヴィーなカッティングに憧れるプレーヤーが急増。「カッコいい演奏」のトレンドも変化している 2.大特集主義を打ち出した表紙デザインへ ジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンといった有名ギタリストよりも、「シティポップ」「スライドギター」など特集の切り口を前面に打ち出すように。昭和歌謡曲特集では矢島賢に代表される職人芸にフォーカス 3.CDやライブでなくSNS発信のヒーローが誕生 InstagramやYouTubeなどのSNSから新たなカリスマが続々と生まれている。メジャーレーベルからCDデビューを果たさなくても、ビッグアーティストのツアーメンバーに選抜されるチャンスが転がっている時代なのだ ●ギター・マガジン ’81年創刊。発行元はリットーミュージック。ギターの奏法から機材まで、圧倒的な量の文章と図版で解説する。ギターサウンドを軸に、ポップなものからマニアックなものまで多種多様なジャンル・国・時代を取り扱う <取材・文/週刊SPA!編集部>
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