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<純烈物語>「誰と一緒にやるかより、誰にこれをやらせるか」キャスティング力の勝負<第15回>

第15回 “キャスティング力”で集めたメンバーと「純烈丸」に乗って芸能界の荒波のなか、出航

 酒井一圭が純烈のメンバーを選ぶにあたり発揮されたのは“キャスティング力”だった。誰と一緒にやるかより、誰にこれをやらせるかの方が遥かに重要という発想である。  バンドを組むにしてもまずは方向性に合ったパートを決める。ロックがやりたければギター、ベース、ドラムとボーカルは必須。だがインストゥルメンタルを奏でるなら歌は必要なくなり、キーボーディストを入れようとなる。  戦隊俳優に仕事を振る立場からキャスティングの仕事をしていた酒井とすれば、そうしたスタンスで人を集めるのが自然な考えだった。仲のいい人間を集めた方がつながりは強いし、風通しもいいだろう。でもひとたびこじれた場合、逆に修復が難しくなる。  人間関係とは、そういうものだ。レコード会社のオーダーを踏まえつつ、酒井は純烈をやるにあたって必要なパートを見立て、その役どころにこれと見込んだ人材をシフトしていった。  そのパートというのが「声」、「年上」、「白馬に乗った王子様」、「振付」、そして「運」とまるでバラバラ。戦隊にたとえると赤・青・黄・ピンク・緑のように並びよく収まるようなカラーではなく、一見すると「えっ、なんでその色を入れるの?」というようなものばかりだった。 「もともとキャスティングの仕事をやっていたからというのもありますけど、最初の時点でドリフターズをイメージしていたんですよ。ドリフもバンドからコントグループに変わっていったじゃないですか。僕らも俳優出身者ばかりで演奏はできなかったから、バンド形態ではなく踊るムード歌謡から出発したわけですけど、僕の中には永久にその形でいくという展望は、その時点で実はなかったんです。  ドリフのように、時代の気分やすう勢によって、あるいは周囲の流れの中で純烈そのものが変わっていく確率の方が遥かに高いと思った。そうなると、サイコロの目のようにそのつど表に来る面を変えていく必要がある。いろんなキャラクターや見せ方、表現を一つのグループが見せるから面白いわけで、あとはそれらをどう純烈という形で整えて見せるかなんですよね」  酒井の口からドリフターズの名が出た瞬間、我が意を得たりと思えた。6・12NHKホール単独公演はどこをどう切っても『8時だョ!全員集合』のオマージュだった。男の子は、影響を受けたものを自分で踏襲せずにはいられない生き物なのだ。  純烈がムード歌謡グループとは違うサムシングを求められた時、がん首揃えてコーラスしかできなかったらお話にならない。スタートの時点で酒井はあらゆるニーズや機運に対応できるよう、一見バラバラのパートを集めていたことになる。  思えば『純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦』も「マッスル」の戦友、スーパー・ササダンゴ・マシンに脚本を依頼し、その内容に合わせたプレイヤーをはめ込んだ。最上川司に真田ナオキ、ベッド・イン、アンドレザ・ジャイアントパンダ、そして前川清……どれもその役どころにおいては、ベストなキャスティングだった。  驚いたことに酒井は、純烈を始めるにあたりメンバー以外がメインボーカリストを務めてもいいという考え方だった。それほど自分たちの歌い手としての力量を客観視した上で、やっていく方法論を模索していたのだ。
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「誰も唄えないんだったら、あてぶりでもいい」
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