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サイボウズ青野社長「夫婦別姓を認めないで税金100億円超をドブに捨てる政府に呆れる」

 2018年は、選択的夫婦別姓を求める複数の訴訟が起こった。今から3年ほど前、2015年12月に最高裁大法廷で「夫婦同姓は合憲」という判決が出た(夫婦同姓を義務付ける民法750条は合憲、という判決)。この時代遅れの判決に対して、「もう黙ってはいられない」と立ち上がった人々による国家賠償訴訟だ。

青野社長が夫婦別姓を求めるわけ

サイボウズ青野慶久社長。裁判後の合同交流会で

サイボウズ青野慶久社長。裁判後の合同交流会で

 2018年1月にいち早く訴訟を起こしたのは、上場企業であるサイボウズ株式会社社長の青野慶久氏ら4人。国を相手に計220万円の損害賠償と法改正を求めている。  婚姻した夫婦の96%が夫の姓を選ぶ日本において青野氏は、戸籍上は妻の「西端」姓を選択し、旧姓「青野」を使用している。  12月5日の法廷で青野氏は、通称使用や改姓がいかに不合理かを訴えた。 「青野慶久」は両親が姓名判断を用いて期待と願いの込めた名前を選んだこと、それを変更する申し訳なさ。  通称は青野だが戸籍名は西端であるために、多くの混乱を生んでいること。クライアントが「青野」で手配したホテルに泊まるために、婚姻前に取得したパスポートを探し出して持って行ったそうだ。  前回の裁判では、裁判所の告知が「原告:西端慶久」であったために法廷が見つけられず、遅刻して裁判に間に合わなかった傍聴人が2名いた(そのうちの1名が筆者である)こと。  婚姻して姓が変わったために株式の名義変更をする必要があり、その費用として81万円もの手数料がかかったこと。  これらは、夫婦別姓が選択できれば起こらなかったことだ。  しかしこうした「個人の感情や負担」以外にも、別姓を認めるべき経済的理由があるという。青野慶久氏に聞いた。

「マイナンバーに旧制併記」のために予算100億円の愚

「総務省は、マイナンバーカードに旧姓を併記するためのシステム変更に100億円の2017年度補正予算をつけました。これは選択的夫婦別姓を実現していればしなくていいことです。このIT人材難の時代に、それだけの人材を、価値を生まない改修に費やすことは無駄でしかありません。さらに個人の証明はマイナンバーだけではありませんから、実際はこれ以上に膨大なコストがかかるはずです」(青野氏、以下同)
総務省マイナンバーカード

総務省「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ」より、旧姓併記のイメージ

――通常、人と金が動けば経済が回るとされています。この改修が無駄だと言われる理由はどこにあるのでしょう? 「改修をすることで誰かが喜んでいるなら価値のあることです。しかし夫婦別姓を望む人たちは『旧姓を名乗り続けたい』のであって、旧姓を併記したいわけではありません。改姓せずに旧姓を名乗るのは、もっとも社会的コストが低いんです。  価値を生んでこそ、経済を回す意味があるわけですから、この改修に伴う費用と労働力は、無駄な穴を掘るのと同じです。『大きな穴を掘りましょう! そして掘ったら埋めましょう! ほら、経済回りました!』みたいな」 ――法改正という一手を打つだけで済むことを、穴を広げて済まそうとしているのですね。青野さんの一連のツイートや取材記事を読んでいると「不便だから変えて!」と感情的になっているのではなく、社会における立ち位置を理解されているように感じます。 「僕が原告になることに意味があると思っているんです。これまで別姓問題は、姓を変える人の96%が女性だったため、女性差別の一環とみられていました。でもこれが50%50%になっても問題は解決しません。なぜなら姓を変えた人に精神的コスト、経済的コストが発生することが問題なんです。  僕は男性で、上場企業の社長です。これまでこういう人間が夫婦別姓を語ったことはないので、新鮮なはずです。働き方改革と同じですね。これまで何万人の男性が仕事で追い詰められて自殺をしても社会は何ら変わりませんでした。男性が身を粉にして働くのは当たり前と思われていたからです。でも女性が追い詰められて自殺をしたという痛ましい事件が起こったことで一気に世論が動きました。ジェンダーイメージを破る意見に人は耳を傾けやすいんです」
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ルールを変えることを怖がる日本人
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