年末の繁忙期、イノシシ取材に振り回されたテレビ業界人の嘆き
―[特集「年末年始」]―
2020年の干支はネズミだ。去年はイノシシだった。いま多くの人が気持ちあらたに、新年を迎えているはずだが、イノシシを引きずり続けた人たちがいる。イノシシに翻弄され、ネズミどころではない。それは、テレビ業界の話である……。
イノシシ取材、いつまで続けるのか
結局は、数字が取れるから?
ネット上にも、イノシシばかりを取り上げるテレビ局の姿勢を非難する書き込みが相次いだ。テレビ局はなぜここまでイノシシを執拗に追いかけたのか。別のテレビ局報道デスクが説明する。
「そりゃ田舎じゃイノシシも猿も当たり前でしょう。ですが、都心に近い住宅街に出たとなれば、それは市民の命が危機にさらされていることを意味します。大げさではなく、報じる意味があるのです。ただ、各社があまりに執拗に追って報じるから、過熱気味だったことは間違いありません。あと……数字(視聴率)が取れることも、否定はしません」(報道デスク)
確かに、首都圏に猿が出没した時のテレビ報道の加熱っぷりもハンパではない。まるで凶悪犯人が刑務所から脱走したかのように大騒ぎである。人身安全のためと主張しつつ、数字も取れると明かす報道側、そしてくだらないと思いながらも見てしまう私たち。前出のT氏がいう。
「結局、視聴者が面白いと思う、興味を持つものしか放送しないし、できない。どんなに意味のある取材ができて放送しても、それが面白くなければ見てくれない、数字も出ない。一部の人たちからくだらない、他に報じることがあると指摘されて、私たちだってそう思いますが、大多数は見てくれるんです」(T氏)
大衆に迎合することを「ポピュリズム」などと表現するが、我々はテレビを見ているつもりでいて、実はテレビも我々を見ていることを、人はあまり考えない。テレビはまさに我々の姿を映し出す鏡なのだ。<取材・文/山口準>
―[特集「年末年始」]―
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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