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「愛子様」女系天皇論者に問う5つのこと/倉山満

「女系論」を自称する人々は、皇室の伝統を破壊する単なる「雑系論」でしかないと理解しているだろうか

 皇位継承に関する先例は、皇室を守る中核である。いくつもの掟があるが、その一つが「平民の男子が皇族の女子と結婚しても、その子は皇族になれない」である。ましてや、その子を天皇にするなど、論外だ。  もしそれが許されるなら、弓削道鏡は称徳天皇と結婚して、その子を天皇にすればよかった。そんな横紙破りが許されるなら、藤原氏は何のために摂関政治などという迂遠な方法を何百年も続けたのか。平清盛や徳川秀忠とて、娘を天皇の嫁に送り込む以上の方法は採れなかった。繰り返すが、皇室には先例という掟があるからだ。  足利義満は皇位簒奪に肉薄した人物である。その証拠に、死後に「法皇」の尊号を贈られている。生前、30年かけて先例の隙間を突き、既成事実を積み上げ、あと一歩まで肉薄したところで急死した。武力、財力、知力を兼ね備え、空前の超権力を手にしていた義満さえ、先例の壁を突き崩すのは至難であり、最終的に挫折したのである。  もし「皇族の女子と結婚して、その子を天皇にしてよい」などが許されるなら、義満に限らず、歴代権力者は誰もがやっていただろう。しかし、掟があるので許されなかった。  ところが、その絶対に守らなければならない掟を、いとも簡単に捨て去ろうとする者がいる。平気で「先例などド~でもいい」などと言ってのける者がいる。その人たちの主張は俗に「女系論」と呼ばれる。だが実は、中身は違う。  不敬を承知であえて名前を出す。愛子様(敬宮殿下)が、女帝となり、平民の男と結婚され、その子息が天皇になるとする。その場合、後継者が女子でなければ「女系」にならないのだが、それを「女系論」を自称する人たちは理解しているのだろうか。男子でも女子でも良いとするのは「雑系」にすぎない。  皇室はこれまで一度の例外もなく男系継承を続けてきた。原則として男系男子、例外として女帝を認めてきた。この先例を変えて、今後は原則として女系女子、例外として女系男子による皇位継承にしなければ、皇室の伝統を破壊する単なる「雑系」でしかない。いわゆる「女系論」は女系でもなんでもないのだ。  この人たちは自称する名前からして間違っているのだが、当然ながら中身も間違っている。主張が論理的ではない。  しばしば、「自称女系論者」は、「男系の伝統に固執するのは、悠仁親王殿下に御負担がかかりすぎる。そもそも、奥方になってくれる女性が現れるのか。出産のプレッシャーがすさまじくなる」と主張する。ならば、「愛子天皇」が実現しても同じではないか。むしろ、「愛子天皇」ならば、天皇の御公務をしながら、出産のプレッシャーと戦わねばならない。いわゆる「女帝論」「女系論」で最も迷惑するのは、敬宮殿下に他ならないではないか。  そんなに出産のプレッシャーが嫌なら、血縁による皇位継承などやめてしまって、赤の他人と養子縁組をするしかないではないか? よって、俗流の「女系論」の理屈は論理破綻しているのである。  女系と称する雑系など、単に皇室の伝統を破壊する強弁にすぎない。本来ならば「先例が無い」の一言で終了なのだが、よくわかっていないらしい。  では、五つ問う。  第一に、外国人の君主、ハーフの君主を受け入れても構わないのか?  第二に、平民の君主を受け入れても構わないのか?  第三に、女帝に結婚の自由を認めて良いのか?  第四に、一時の多数決で何をやっても良いのか?  第五に、以上四つを先例以外の何で否定するのか?  最近、イギリス王室で不祥事が起きた。我々も他山の石とすべきであろう。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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