更新日:2023年05月18日 16:37
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山奥の牢獄に、似つかわしくないエロビデオ一本。その正体は――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第78話>

穴の中から出てきたものは……

「穴が開いてます!」  ついつい叫んでしまった。  台の天板が破られ、そこにぽっかりと穴が開いていたのだ。けっこうな大きさで、横長に穴が広がっていた。おそらくこの部屋に泊まった誰かが不注意で壊してしまい、弁償させられちゃかなわんと龍の像でその穴を隠したんだと思う。  「なになに、穴が開いていたの?」  僕が叫んだものだから薮田さんも大下君も、どれどれといった感じでその穴を見に来た。  「誰か壊しちゃったんですかねえ」  そう言いながら穴を覗き込むと、チラリと何かが見えた。  「なにか入ってます」  手を突っ込んでみると、それはDVDのパッケージだった。  「セックス・アンド・ザ・シティ、エロいやつですかね」  大下君がそう言った。セックスとつけばなんでもエロいものだと思っているタイプの人間だ。  「いや、これはアメリカの連続ドラマだよ。ラブコメで人気があるやつだ」  僕がそう言いながら、なんでもセックスってつくものがポルノだと思ったら大間違いだぞ、と思いながらよくよくパッケージを見ると、「セックス・アンド・ザ・シティ」ではなかった。  よくよく見ると「SEX AT THE CITY」と書かれており、その下にはカタカナで「セックス・アンタ・ト・シテェ」と書かれていた。これポルノだ! セックスとついたポルノだ!  世の中とは相当に広いもので、エロビデオの世界には「パロディエロビデオ」という一大ジャンルがある。有名な映画をパロディし、パッケージまで似せて販売するポルノだ。  有名なところではかの名作映画「タイタニック」のパロディである「パイパニック」、超大作映画「アベンジャーズ」のパロディで「ハメンジャーズ」、そのシリーズである「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のパロディで「ハメンジャーズ/エエ・チチ・モム・ウルトロン」、パニック映画「ジョーズ」のパロディで「床ジョーズ」などなど。絶対にこのタイトルを考える時の会議で社員が爆笑しながら考えてるだろうというものが居並ぶ愉快なジャンルだ。  その流れで、名作連続ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」のパロディで「セックス・アンタ・ト・シテェ」である。これも絶対に社員が爆笑しているに違いない。  「なんでこんなところにこんなものが……」
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これは怪盗の予告状ではないか?ということになった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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