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山奥の牢獄に、似つかわしくないエロビデオ一本。その正体は――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第78話>

山奥の研修施設にあり得ないものを発見

 もうずいぶんと昔の話になるが仕事がらみの研修で一週間ほど山の中に幽閉されたことがあった。  そこは研修施設と、古ぼけた宿泊施設しかなく、日用品の買い出しにすら困る始末、近くの商店まで徒歩で40分という立地から脱出不能の難攻不落の要塞として恐れられ、畏怖の念をこめて「プリズン」と呼ばれていた。携帯電話の電波もちょっと怪しい、そんな場所だった。  その研修を終えて宿泊施設に行くと、どうやら3人で相部屋らしく、他の2人が部屋の前で待ち構えていた。なんでも部屋の鍵が開かないらしい。  相当に古ぼけた建物なので、鍵が鍵として機能しておらず、最終的には力業でこじ開けることになってしまった。  「この部屋、いつもなんだよな」  そうぼやいたのはけっこう先輩にあたる薮田さんというおっさんだった。この研修は先輩社員も指導役として参加するのだけど、もう10回以上もこの研修に参加し、何度もプリズンに宿泊しているなかなかの剛の者だった。  もう1人はガチの新人で、プリズンは初めての様子。なぜか6角形のベンゼン環みたいなメガネをかけている大下君だった。  「本当に何もないんですね、このあたり」  みたいに、初めてのプリズンに震えていた。僕自身、プリズンは二度目だったが、この宿泊施設に泊まるのは初めてだった。  「言っておくけど、夕飯には期待するな」  薮田さんは先輩風を吹かせてそう言った。僕も大下君も夕飯すら希望できないのかとやや絶望的になった。  宿泊する部屋は、3人に割り当てられた部屋にしては広かった。下手したら10人くらい眠れそうな和室で完全に持て余していた。自然と3つの角にそれぞれが陣取り、カバンを置いて領地を確保しだした。  僕が確保した陣地の近くには何か金庫とかを置くような木製の台があり、そこには木彫りの龍の像が置かれていた。けっこう大きな像で、高級な骨董品のようにも思えた。ただ、僕はその光景を見て何となくだが違和感を覚えた。 「なんでちょっと左にズレているんだろう?」  その台は、少し黒みがかった木の板でできていた。普通ならその中央にドシンと龍が置かれそうなものだが、けっこう不自然に左側に寄っていた。普通こういうのってバランス的に真ん中に置くんじゃないの、もしかしてこっち側に何かあったのかな、と不思議に思い、少しだけ龍の像を動かしてみた。  そこには驚きの光景が広がっていた。
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穴の中から出てきたものは……
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