仕事

42歳日雇い男、若者だらけの職場で働く「20代バイト女子に命令されて」

 日雇い派遣にはさまざまな職種があるが、飲食系になると、そこで働くのはほとんどが20代の若者になる。そこにいい歳をした中年のおっさんが入って彼ら若者たちといっしょに働いたらどうなるだろうか。
働く人

※画像はイメージです(以下同)

 現在42歳、僕はふだん小説を書いて小説投稿サイトに投稿している。それでごく少数のファンは獲得しているのだが、まったく収入には結びついていないので、アラフォーになっても日雇い派遣で生活費を稼がなくてはならない状況が続いていた。
小林ていじ

日雇い派遣の仕事を数多く経験してきた筆者(小林ていじ)

 いちばんよくやっていたのは飲食系の派遣だった。人手の足りない飲食店やフードイベントなどに派遣されて働く。そこでいっしょに働く人たちはかなり歳下であることがほとんどだった。が、そのせいで僕が現場で浮いた存在になってしまうかというと、意外とそんなこともない。僕は実年齢よりも若く見られやすいので、いっしょに働く若者らもタメ口でフレンドリーに接してくれていた。仕事終わりにいっしょに飲みに行くことも少なくなかった。

たかがバイトの身分で偉そうにする奴も

 しかし、決して楽しいことばかりでもない。年下の店長から偉そうにされるのはやはり気分のいいものではないし、店によっては、バイトと派遣のヒエラルキーもあった。通常、バイトというのは職場においてもっとも立場の弱い存在である。が、そこに派遣が入ると派遣が最下層に置かれ、上から順に社員、バイト、派遣というヒエラルキーができる。そして、たかがバイトの身分で派遣に偉そうにする輩が出てくるのである。  僕が春奈(仮名)と出会ったのは、そんなヒエラルキーが強く存在するおしゃれなカフェレストランだった。彼女も派遣の身分である。僕を含めて5人が派遣され、春奈はホールに、僕はキッチンに振り分けられた。  キッチンはバイトの若い女のコらが仕切っており、僕ら派遣は彼女たちから指示を仰いだ。僕はガパオライス作りを任された。バジルなどで炒めた鶏ひき肉と目玉焼きをライスに乗せたタイ料理である。が、誰かが作り方を教えてくれるわけではなく、ガパオライスのレシピと完成見本写真だけを渡されて「これで作れ」という。  けっこうな無茶振りではあるが、それでも料理一品だけ作っていればいいのならなんとかなるかな……とたかを括っていた。が、甘かった。営業が始まると、まったく休む暇もないほどに次から次へとガパオライスの注文が入ってきたのである。ガパオライスがこの店の看板メニューなのかと思えるほどの勢いだ。

恐ろしいバイトの女のコらの陰口

ガパオライス フライパンで鶏ひき肉を炒め、同時進行で目玉焼きを焼いていく。ガパオライスと格闘する、そんな僕の傍らでひとりの若い男がおろおろしていた。僕と同じ派遣である。彼は皿洗いなどの雑用を任されていたのだが、いまいち仕事の要領を掴めていない様子だった。  彼は地下倉庫にエビを取りに行かされた。すると、その途端、バイトの女のコらは彼の陰口を叩きはじめた。 「あの派遣まじで使えないよね」 「少しは自分の頭で考えて動けっての」 「あいついても邪魔なだけだから、もう帰ってもらったほうがよくない?」  しばらくして彼がキッチンに戻ってくる。 「エビ持ってきました」 「そこ置いといて」  それで彼への陰口は止むのだが、僕はなんだか胸がきゅうっとなった。女の陰口ほど恐ろしいものはないなと思った。  ガパオライス作りには徐々に慣れていった。目玉焼きは美しい円形に、黄身の部分はほどよい半熟に焼けるようになる。味がどうかはわからないが、とりあえず見た目だけはタイの一流シェフが作ったかのようになっていた。客もまさかこれをその日来たばかりの派遣が作っているとは思わないだろう。  派遣の若い男の陰口を叩いていた女のコが僕の作ったガパオライスの皿を手に取ってじっと見つめる。まるで作品を審査されているかのような緊張が走った。少しして彼女は僕のほうに顔を向けて笑顔でこう言った。 「ガパオライス作るのうまくなったじゃん。上出来、上出来」  僕はホッと胸を撫で下ろした。ホールに春奈の姿が見えた。彼女もバイトの女のコから厳しく叱責されながら慌ただしく動きまわっている。僕は彼女と目が合うと、目で「頑張れよ」とエールを送った。
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「いつまでこんな生活続けてていいと思う?」
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