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「人に関心がないから相談に乗れる」プロが語り合う“無関心の作法”<爪切男×ものすごい愛>

 元恋人との赤裸々な恋愛体験を描いた作家・爪切男の『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)のドラマ化が決まった。爪氏は普段から相談を持ちかけられることが多いという。そして、昨年12月に『命に過ぎたる愛なし 女の子のための恋愛相談』(内外出版社)を上梓したものすごい愛氏。こちらは一般女性の恋愛相談に答える連載をまとめた一冊となっている。そんな、“人生相談のプロ”同士、愛を持って人と接するお二人に、コミュニケーションの極意を聞いた。

『死にたい夜にかぎって』著者・爪切男(左)と『命に過ぎたる愛なし』著者・ものすごい愛

どうしようもない「負」のオーラを醸し出す女性に惹かれる

――お二人が出版に至った経緯を教えてください。 爪切男(以下、爪):僕は以前、『日刊SPA!』で「爪切男のタクシー×ハンター」という連載をしていました。もともとは、僕とタクシーの運ちゃんとのやりとりの話のはずが、話の都合上、昔、同棲していた彼女のアスカとの恋愛話も書いていたら、そっちの話の方が反響が良かったので、その部分を膨らませて本にしようという流れになりました。 ものすごい愛(以下、愛):私は前職が薬剤師で理系なので、文章を書いたことはありませんでした。もともと本を読むのは好きでしたけど。私のツイッターを見てくださっていた『AM』の編集の方から連載のお話をいただいて。それを長く続けていくうちに、内外出版社の方に連載の書籍化のオファーを頂き、出版に至りました。  今回の本は2冊目で、前作を書き終えたときは「もう無理だ! 書けない!」と燃え尽き症候群のようなものになってしまって、地域の作文教室に通ったほどです。それくらい、文章を書くこととは無縁で、慣れていませんでした。 ――前職が薬剤師とは意外です。 :自分で言うのもなんですけど、結構愛想もよくて親切な方なんで、なかなかいい薬剤師だったと思います(笑)。 :いいですね、薬剤師。知的な印象ですごく可愛いなと思います。 :でも、薬剤師になるためには薬学部に進学しなければなりません。ご存知の方も多いと思いますが、薬学部は6年制で、それプラス卒業研究や卒業試験、国家試験があるので、留年する人も多いんです。他の学部の同級生たちは4年制で卒業、就職して3年目くらいに結婚というパターンが多いので、「周りと比べて遅れてる!」と焦っていました。国家試験にさえ受かれば……!と、学生時代はとにかく勉強ばかりしていましたね。 :留年もいいですね。僕が大学時代に仲が良かった女友達も留年したときが四年間で一番可愛かったですもん。 :あはは(笑)。やっぱり爪さんは「負」を背負っている女性が好きなんですか? :好きですね。人間って、どうしようもない状況でしか出せない「負」のオーラがあるんですよ。そのオーラをまとった女性は本当に美しいんです。 :私も留年して国家試験にも落ちて、8年かけて薬剤師になったのですが、就職した会社がブラックだったんです。すでに夫とは結婚していて、夫も「仕事辞めて好きなことやりなよ」と言ってくれたので、仕事を辞めて「さて、何しようかな」と考えていたときにツイッター経由で文章を書くお話を少しずついただけるようになって。『AM』さんから連載のお話をいただいたのも、ちょうどこの頃です。 ――愛さんは爪さんの本を読んでどんな感想を抱きましたか? :下心があるからこそできる優しさはたくさんあると思うのですが、爪さんはそれを理性や思いやりで見えないよう隠したりごまかしたりしているのが素敵だなと思いました。特に「アサリの鳥葬」(爪さんがペットとして飼っていたアサリを恋人のアスカが調理してしまう)の章がすごく好きです。でも、「爪さんだって悪いところあるじゃん! 風俗行ってるじゃん!」って。  ただ、風俗の是非は別にして、爪さんが清廉潔白でまっとうに生きていて道を外したことがない人だったら、アスカさんとの関係はまた違ったものになっていたと思うんです。 :確かに良い彼氏ではなかったと思います。でも、風俗通いはアスカが浮気を繰り返すのでその腹いせです。 :だとするとお互い様ですね。それでも、アスカさんの精神障害に寄り添ったり、太ってしまったアスカさんのダイエットを応援するためにダンスをマスターしたり、精一杯アスカさんを愛していますよね。そして、どんな女性に対しても優しいと思います。 :女性は全員好きです。一律一位です。 :えっ! それはうれしい! 誰も仲間外れにならないなんて。みんな等しく愛される。「私なんて……」と自信がなくなっている女性は爪さんに会いに行けば自己肯定感を上げられると思います。
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