更新日:2019年11月14日 11:57
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「発達障害を隠さずに働きたい」30代女性が絶望した、企業側の理解のなさ

発達障害当事者が就労移行支援事業所に殺到の理由

「今、『発達障害の自分でも働けるんだ!』とわかった当事者たちが就労移行支援事業所に殺到しているんです」  そう語るのは某就労移行支援事業所を利用して就労することが決まった、埼玉県在住の田中真知子さん(仮名・30代)だ。  2018年4月、法改正によって民間企業に対する障害者雇用の法定雇用率が0.2%引き上げられ、2.2%になった(従業員45.5人以上の事業者が対象)。その障害者雇用の対象は、2013年までは身体障害者のみだったのが、今では発達障害者を含む精神障害者までが対象になっている。田中さんが冒頭で“殺到している”と話した背景には、こういった法制度の変更がある。  ただ、就労移行支援事業所に通えたからといって、その後の就労にスムーズに結び付けられるとは限らない。  もともと田中さんは発達障害の一種であるASD(自閉スペクトラム症)と二次障害のうつ病のため障害者手帳2級を所持している。「ASDは空気が読めない」と言われがちだが、彼女の場合、無理して入った中高私立一貫校が合わなかったことや、信頼している親友から裏切られたのをきっかけに、空気を読みすぎる過剰適応を起こし、うつ病を発症してしまった。

障害者手帳を手にする田中真知子さん(仮名・30代)

 高校卒業後は専門学校に進学したが、途中でついていけなくなり中退。その後は職を転々とし、最近までは約5年間、普通のアルバイトとして接客業に従事してきた。障害に関しては黙っていたが、年末調整などの関係で上司に障害を告白せざるを得なくなった。しかし、合理的配慮などはなく、職場の人間関係などのストレスが溜まると体調が悪化し、欠勤することもあった。  そんなある日、突然会社が倒産して解雇。この先どうしようかと途方に暮れていたところ、障害者雇用枠で働ける可能性のある就労移行支援事業所の存在を友人に教えてもらい、3ヶ月間通った。 「今まで、就職するにはハローワークしか手段がないと思っていたんです。でも、ハロワって障害者雇用、しかも精神障害者を募集しているところはとても少ないです」
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ハローワークとは異なる就労移行支援事業所
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フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ、。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は社会問題、生きづらさ。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)『生きづらさにまみれて」(晶文社)、『ルポ 高学歴発達障害』(ちくま新書)

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