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アルコール依存と「発達障害グレーゾーン」の悲しい関係性

 ここ2~3年で一気に認知度が上がった発達障害。主に、衝動的な言動や不注意の多いADHD(注意欠如多動性障害)、コミュニケーションに難があり独特なこだわりや反復行動を好むASD(自閉スペクトラム症)、知的な問題はないものの、読み書きや計算に問題が生じるSLD(限局性学習障害)の3つがある。
アルコール依存

※写真はイメージです

 しかし、発達障害の傾向はあっても診断まではおりない「発達障害グレーゾーン」という層も存在する。発達障害グレーゾーンの層は確定診断がおりた場合に受けられる福祉サービスが受けられなかったり、周囲にどうカミングアウトするか悩む人が多い。そして、「他の人が簡単にできるのに自分にできないことがある」と、努力不足なのではないかと自分を責めがちだ。

生きづらさのストレスから酒に逃げた

 先日『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)を上梓した、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は著書の中で、発達障害グレーゾーンの特性のために職場で不適応状態に陥った結果、アルコールにのめり込んでしまった女性、Dさんの事例を上げている。  斉藤氏は「発達障害的傾向からくる生きづらさが依存症の一因となる場合がある」と語る。アルコール依存症というと、焼酎のペットボトルを抱えて手を震わせながら一日中飲酒している姿を想像してしまうが、最近のアルコール依存症の患者が飲むお酒は、低価格でアルコール度数が高い缶タイプの商品に変わっているという。 斉藤章佳氏「患者さんの部屋に訪問に行った際、ゴミ袋いっぱいに空き缶が詰まっている光景をよく見ることがあります。これが一晩に飲む量で、翌日も大量の空き缶のゴミ袋が出るんです」  著書に出てくる発達障害グレーゾーンのDさんの場合、元々は飲酒の習慣がほとんどなかったのにもかかわらず、飲酒がやめられなくなった。これはなぜなのだろうか。 「Dさんには内向的で人とコミュニケーションを取るのが苦手なASDの傾向がありました。それで、仕事がうまくいかないストレスで眠れなくなり、最初は弱い度数の甘いチューハイを飲み始めました。いわゆる寝酒です。寝酒は寝付きをよくする効果が多少はあるものの、睡眠の質事体を落としてしまいます」  飲酒習慣がなかった人が飲み始めるのは、飲むことによって得られる“メリット”があるからだと斉藤氏は語る。Dさんの場合、寝付きがよくなった。しかし、Dさんは次第にアルコールの耐性がついてだんだん度数の高いお酒を飲むようになり、最終的にアルコール度数の高いお酒に手を出した。その結果、酒のニオイをさせたまま出勤したり、遅刻や欠勤が増えたことを先輩に指摘され、仕事をやめざるを得なくなったそうだ。  また、Dさんはおとなしくて自己肯定感が低く、親しい友人もいなかった。そのため、仕事の悩みを相談できる相手がいなくて酒に走ってしまった。女性の発達障害傾向のある人の中には、孤立した寂しさを埋めるため、複数の男性と関係を持つ性依存に陥る人もいるという。Dさんの場合、婚活で出会った男性に騙されてしまったため、男性に不信感を抱くようになり、それ以上踏み込むことはなかった。 斉藤章佳氏「発達障害の傾向がある人には、子どもの頃にいじめられたエピソードを持つ人がとても多いと言われています。自己肯定感を持てずに『自分は変なのかもしれない』と思いながら大人になり、社会に出る。そして、不適応からくるトラブルが最も出るのが仕事の場面です。  グレーゾーンの人は社会に出てから挫折を経験することが多いのではないかと思います。学校はコミュニケーションが比較的ゆるいので顕在化しにくいのですが、恋愛や職場は人間関係が濃いし、長期的なスパンになります。そうすると一気に特性が顕著になり、悩んでしまうのだと推測しています」
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グレーゾーンの人はおとなしい人が多い理由
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しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには

あなたの飲み方、大丈夫?

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