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男が非モテコミットすると、女はどんなに恵まれていても男を愛せない/藤沢数希

―[モテる映画工学]―
~映画『Red』~
モテる映画工学

©2020『Red』製作委員会

男が非モテコミットすると、女はどんなに恵まれていても男を愛せない

 塔子はハンサムでお坊ちゃんの一流商社マンと結婚し、かわいい娘と夫と金持ちの夫の両親と一緒にお屋敷で暮らしている。塔子自身はひとり親に育てられ、こうした暮らしに憧れてきた。それを結婚によって手に入れたのである。夫は優しく、塔子のことを愛している。  そんな恵まれた日々を送っているものの、どこか行き場のない思いも抱えていたある日、大学時代に建築事務所で自分をアシスタントとして雇っていた、妻夫木聡演じる陰のあるイケメン鞍田に再会し、パンパンやってしまい、ついにはすべてを捨てて旅立つ。原作は大人の女性たちの共感を得てベストセラーになった小説だ。  原作も女性作家、そして映画監督も女性である。男性が作る恋愛作品は、「フレンドシップ戦略」(まずは友達のふりして仲良くなる戦略)からの「非モテコミット」(その女しかいないのでその女だけにコミットしてしまう状態)で、おおよそヤリ○ンとはかけ離れた美少女との恋愛がうまくいくと相場が決まっているのだが、現実はそのようにはいかない。  恋愛工学が教えるとおり、非モテコミットはダメ。ぜったい。女というのは、どこかで「この男を失ってしまうかもしれない」と感じているときしか、本気で男のことを愛することができないのだ。  妻や彼女のことを愛しているからこそ、たまにほかの女とも遊ばないといけないし、たまにはディスってあげないといけない。そうすると、ほかの女が狙っているほど価値が高い男、私のことを見下してバカにしてくるはるかに優れた男と私は付き合えているんだわ、と女は思い込むので、とても満足げなのだ。
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある

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監督/三島有紀子 原作/島本理生 脚本/池田千尋、三島有紀子 出演/夏帆、妻夫木聡ほか 配給/日活 2月21日全国公開
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