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いまだに殺害予告が続くスマイリーキクチ、今の仕事の8割は…

―[修羅場の突破術]―

殺害予告が一日に1000件。顔の見えない敵と闘った20年

修羅場の突破術

お笑い芸人・スマイリーキクチ氏

 現在まで20年以上にわたり、匿名の集団による誹謗中傷、殺害予告などの被害を受け続けているお笑い芸人のスマイリーキクチ氏。『ボキャブラ天国』などで活躍していた人生が、ある日を境に一変したのが’99年。少年法改正のきっかけともなった凶悪犯罪「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人だとして、突如ネット上で告発されはじめたという。 「最初に知ったのは、事務所のホームページに書き込まれたコメントでした。当初は『何を騒いでいるんだろう?』と危機感はまったくなかったです。自分とは関係のない架空の凶悪犯がつくり上げられていくのを、不思議だなと客観視していました。ホームページで否定すれば、それで終わりだと思っていました」
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韓流ブームの火つけ役となったぺ・ヨンジュンのモノマネで人気を博した直後修羅場に

 だが、荒らしコメントは日に日に激化していき、誹謗中傷や殺害予告が一日に1000件を超えるように……。さらに、出演番組やスポンサーへと飛び火していく。 「番組スタッフから『次のロケもお願いね』とスケジュールを押さえられていても、次々にキャンセルになってしまう。僕が出演すると猛烈なクレームが押し寄せるため、仕方のないことでした。仕事の8割はふっ飛びましたね」  このままではノイローゼになるとネットを完全に遮断するも、事態はさらに悪化していく。 「ワイドショーなどに出演していた元刑事の著書に、『犯人は出所後にお笑い芸人をやっている』と記載されたんです。これまで証拠もなかった“スマイリーキクチ犯人説”にお墨付きが与えられたようなもの。  ’08年にブログを開設すると、荒らしコメントで溢れ返り、僕を擁護してくれる人のブログにまで脅迫が届くようになった。さらに、『お前の家族も被害者と同じ目に遭わせてやる』などエスカレートし、警察に駆け込みました」

警察への相談はプレゼン。徹底的に証拠を集める

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今は、当時の経験談を交えた講演活動が中心

 脅迫や誹謗中傷の書き込みを中心に膨大な証拠を集め、犯人を追うこと約1年半。ネット上の匿名を実名に変えることができた。 「名誉毀損と脅迫で書類送検できたのは19人。その中には、有名国立大学の職員や会社経営者もいました。ほとんどの人が表の顔は普通の一般人でしたが、書き込みは悪質そのもの。大学職員などは、僕への誹謗中傷を職員同士で競い合っていたといいます」  だが、書類送検はされたものの、検察が実際に起訴したのはゼロ。日本の法律は被害者を守ってくれないと憤る。 「ある人物は、警察が自宅に赴くと、包丁を持って暴れだしたそうです。もしその狂気が行動を伴って自分や家族に向けられていたらと思うと、本当に瀬戸際でした」
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国内最大級のネットリンチを経験して…
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