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なぜマスクの買い占めが起こったのか?佐藤優の答えは…

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

なぜ日本で醜いマスクの買い占めが起こるのか

マスク★相談者★ きよ(ペンネーム) 事務員 女性 36歳  新型コロナが広がってから、私の家の近くのドラッグストアに毎朝行列ができてます。見ていると、毎日のように同じ人が並んでいます。転売を目的とした人でしょうか? 高齢の男性もいます。店員に早くマスクを出すようにと怒鳴ったり、シャッターを勝手に開けて店内に入ろうとする人もいると聞いています。  日本でこんな醜い買い占め行為が行われていることが残念でなりません。マスクが十分にあれば、こんなことは起こらないのかもしれませんが、自分のことしか考えていない人が多いことを知ったのが、今回の一番の衝撃です。なぜ日本の人はこんなふうになってしまったのでしょうか? ◆佐藤優の回答  資本主義社会においては、基本的に行列は起きません。それは市場による調整メカニズムが働くからです。標準的な経済学の教科書から、市場メカニズムについて説明した箇所を見てみましょう。 =====  需要より供給の大きい財の市場においてはその財の価格が下落し、供給より需要の大きい場合は買手が不利になり買手間の競争、売手のせり上げなどにより価格が上昇する。価格の下落は企業の生産量の縮小を通じて供給を減少せしめ、また通常は消費者の需要を増加せしめるから、価格下落の原因であった需要にたいする供給の超過を修正する。価格の上昇は逆に需要の減少、供給の増大を通じて同様に需給の不一致を調整する。  さらに、このような財市場における調整は生産量の変化を通じて生産需要市場における需要を変化させ、ふたたび生産要素市場の調整をひきおこす。(『近代経済学[新版]』62頁) =====  市場メカニズムが働かない国では、需要と供給は行列によって調整されます。私は日本の外交官として旧ソ連に住んだことがあります。モスクワでトイレットペーパーは、1年に2回しか売り出されませんでした。ソ連では、すべての商品の価格が国家によって定められています。転売して儲けると「投機行為罪」で逮捕されました。2~3回逮捕されるとシベリアのラーゲリ(強制労働所)に送られます。  ですから、そういうリスクを冒す人はほとんどいませんでした。だから欲しい商品があると、朝早くから行列をつくって、2~3時間並ぶことが普通でした。トイレットペーパーの場合、購入は1人10個に制限されていたので、会社を休んで行列に並ぶ夫婦も多かったです。ドラッグストアの行列を見て、ソ連時代の記憶が甦ってきました。
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行列をなくすには?
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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