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100円ショップ「キャンドゥ」の売上高を見れば日本人のコロナ意識がわかる

なにがキャンドゥを伸ばしたのか?

 ここまで伸びた要因を分析するために、もう少し“数値”の話をさせてください。  キャンドゥの前年同月比の既存店売上高は、コロナ騒動前後で下記のように推移しており、概ね100%以上の水準を保っています。 2月:109.6% 3月:98.8% 4月:105.2% 5月:113.0%
キャンドゥIR説明資料

2020年11月期第2四半期決算説明資料より

 もちろん、絶好調とは言え、コロナの影響もありました。  具体的には、キャンドゥがテナントとして入る商業施設の休業に営業時間の短縮や、新規出店の延期が挙げられるでしょう。しかし、その不利な状況を覆すほど、キャンドゥ既存店の売上が伸びていたのです。衛生関連商品はもちろん、自宅生活が続く中で需要が拡大した生活必需品はその代表例です。  さらに余儀なくされた「休業」ですが、メリットもありました。それは、固定費の削減です。本来発生するはずだった、各店舗の水道光熱費や賃料などの固定費が減少したことから、販売費および一般管理費は想定を下回ることとなったのです。  出ていくお金が減れば、当然利益率は上がります。結果、キャンドゥの営業利益、経常利益並びに親会社株主に帰属する四半期純利益は当初予想を上回ったのです。

4月と5月で大きく変わったコロナ特需

 では、キャンドゥでは具体的に何が売れていたのか? その実態に迫っていきましょう。まずは3月、4月。  この時期は、まだ緊急事態宣言はないものの、一部企業でテレワークが導入され始めた時期にあたります。もっとも目立つのは、缶詰とタオル・ハンカチ。  こちらが前期比で売上高が170%前後と高い需要となっていました。さらに、感染拡大の懸念から、衛生用品は120%の伸びとなっています。また、家で過ごす時間が多くなったことで、巣ごもり消費としての手芸用品の需要が伸びており、手芸用品が130~145%の売上高となっています。おうちで過ごす時間に使われるものが売れていたんですね。  完全自粛モードだった5月に入ると、変化が生じます。4月まで170%の売上高だった缶詰・瓶詰が110%に需要が落ち、6月に入ると90%台前半に落ち着いています。これは国民の“気分”を端的に示すデータだと私馬渕磨理子は考えます。  3月、4月の頃を思い出してください。  この時期は、日本でも「都市封鎖=ロックダウン」が行われるのではないかといった声があがっており、混乱状態になっていました。結果、人々が「食料品が手に入らなくなるのではないか」という不安から缶詰やレトルト消費を買い漁っていたんですね。しかし、5月頃には物流はしっかりと動いていることが明らかになり、一気に缶詰需要が引いた格好となりました。  これに対し、5月はボトル・スプレーの売上高が前期比150~170%に伸びています。これらはアルコール除菌の詰め替えなどに使われているようで、引き続きコロナ感染拡大への予防意識が高いことが伺えます。たった数ヶ月ですが、キャンドゥの売上高を見るだけで、我々日本人のコロナへの“気分”が見えてくるのです。
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キャンドゥの脱100プラン
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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