更新日:2020年08月28日 16:35
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SNSで拡散「持続化給付金100万円」不正受給の手口。学生、会社員の逮捕者も

不正受給を裏で指南し、暴利をむさぼる詐欺師や反社

 なぜ、これほど不正受給が横行しているのか。 「安倍晋三首相は持続化給付金について、『不正受給がない前提の性善説で入金を進めていく』と言及しました。つまり、じっくり不正を調べてから給付するのではなく、まずは入金を急いできたためです。 7月から、ようやく不正受給の調査が始まっています。実際7月には、虚偽の申請で100万円を騙し取ったとして、山梨県警は埼玉県の19歳の男子大学生を詐欺の疑いで逮捕しました。その後も全国では持続化給付金の不正受給を巡る摘発が続き、『私も不正受給をした。怖くなったから返金したい』といった連絡が増えていると、読売新聞で報じられています」(奥窪氏)  不正受給が判明した場合、延滞金を加えた金額に2割を加算した額の返還などが求められる。制度を所管する中小企業庁によると刑事告発することもあるといい、厳しい刑事罰が科される可能性もある。 「一般人が自ら不正受給したケースもありますが、その裏には不正受給を指南し、暴利をむさぼっている詐欺師や反社会的組織がいるのが実態です。これらのペナルティが、不正受給を行おうとする者たちにとって、どれだけの抑止力として機能しているかは疑問です」(奥窪氏)  奥窪氏の新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』では、新型コロナによる混乱の渦中で不正を働く連中を取材し、その手口を明らかにしている。 「不正受給や詐欺の詳細をつまびらかにすることについては、『模倣犯を誘発する』という批判もあります。事実、詐取が横行していることや、その詳しい手口について、大手マスコミの記者らは『うちでは報道できない』と一様に口を揃えていました。つまり、私のような末端のフリーライターが明るみにしなければ、闇に埋もれていく話なのです。いうまでもなく、政府による巨額の経済支援の原資は税金であり、それがどのように目的外に流出しているのか、我々には知る権利があるはずです」(奥窪氏)  国民の生活を守るはずの給付金に、詐欺師や反社会勢力、悪徳業者、さらには悪事に手を染めた一般人までが群がっている実態をまずは知ってほしい。 <取材・文/SPA!編集部>
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
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