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色黒の角刈り男が熱弁を振るう、持続化給付金「不正受給セミナー」に潜入

―[新型コロナ詐欺]―

巧妙な手口で不正受給が相次ぐ

 新型コロナの影響を受けた人たちを支援するため、中小企業には最大200万円、個人事業者やフリーランスには最大100万円を給付する「持続化給付金」を不正受給したとして、最近、逮捕者が相次いでいる。7月から中小企業庁によって、持続化給付金の調査が行われており、詐欺を指南した人物ではなく、不正受給をした本人が逮捕されるケースもある。  新型コロナ対策の持続化給付金や融資の詐欺事情に詳しいフリーライターの奥窪優木氏によると、「不正受給の指南や申請代行がSNSで拡散されている。クローズドなセミナーも開催され、騙されている人が続出しています」と指摘する。
持続化給付金セミナー

無職や主婦でも持続化給付金がもらえることをほのめかすSNSの書き込み

 奥窪氏の最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』では、新型コロナに関連した給付金や補助金を不正受給する連中を取材し、その巧妙な手口に迫っている。
新型コロナ詐欺

『ルポ 新型コロナ詐欺』では、持続化給付金の不正受給、偽造された税務署の収受印、ペーパーカンパニーを使った詐取、コロナ禍に乗じた悪徳商法、窮地の飲食店に不正受給をそそのかす悪質業者、マスク価格高騰の裏で暗躍していた国際犯罪組織……新型コロナ経済対策200兆円を喰い物にする連中の巧妙な手口に迫っている

 奥窪氏がSNSに「会社員・主婦の方も高額受給が可能」などと広告掲載されているのを発見し、持続化給付金の「不正受給セミナー」の実態を暴露すべく潜入した――。

全国で大規模に開催されたセミナーに潜入

「皆さんが受け取れるのは持続化給付金だけではありませんよ! 新型コロナの経済への打撃を食い止めようと政府が躍起になっている今、事業者が申請できる補助金や助成金はどのくらいあると思いますか? なんと3000種類ですよ! 先ほどもちょうど、以前にこのセミナーに参加された方から『総額850万円の補助金を獲得しました!』という喜びのご報告をいただいたばかりです! 彼はまさにみなさんの3週間後の姿であります!」  20人ほどの聴講者を前に、日焼けした肌に角刈り頭、腕には分厚い金時計を巻き付けた講師の男がそう息巻いた。これは、6月半ばに催された「新型コロナ関連補助金・助成金勉強会」の一幕である。  このセミナーは、5月以降の金・土・日に、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡など、同時多発的に開催されているという大掛かりなものであるようだった。  各種給付金・補助金の不正受給についてリサーチしていた筆者のWebブラウザには、こうした類のターゲティング広告が数多く表示されるようになっていた。仕事柄、そのすべてに目を通していたのだが、これほど大規模にセミナーを展開しているものはほかに見当たらなかった。  筆者が申し込んだ回の会場は、渋谷駅近くの雑居ビルに入る貸し会議室だった。開場時刻の午後4時よりも10分ほど早く着いたのだが、会場入り口に設置された受付台の前には多くの参加者が並んでいた。白髪の好々爺からべっ甲眼鏡をかけた上品そうな初老のマダム、スーツ姿の中間管理職風男性から、長髪を後ろで束ねたTシャツ姿の若者まで、彼らにはまったくといっていいほど統一感がなかった。  受付では「カルテ」と名付けられた紙が渡され、記入するよう求められた。そこには名前や職業、セミナー受講の目的を書く欄のほか、「補助金・助成金を積極的に活用する意思がある」「不正受給や法律に反することは行わない」というチェック項目があった。  この両方にチェックしなければセミナー受講は認められないというのでいずれもチェックし、職業は「会社員」、セミナー受講の目的は「コロナショックに備えて副業を始めるにあたり、補助金・助成金の勉強をしたい」などと適当に記入した。名前はもちろん偽名だ。
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受講生をカモにする、悪質な“セミナー商法”?
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