更新日:2020年09月07日 22:05
ライフ

持続化給付金対象外に不満の民泊大家「国を挙げて奨励していたのに」

―[新型コロナ詐欺]―

民泊業者が新型コロナで大打撃

 新型コロナの影響を受けた人たちを支援するため、中小企業には最大200万円、個人事業者やフリーランスには最大100万円を給付する「持続化給付金」。しかし、持続化給付金や家賃支援給付金の対象外となり、青息吐息なのが「民泊業」だ。民泊は、東京五輪のホテル不足解消策として国を挙げて推進してきた“国策”ともいえる。 民泊大家 新型コロナ対策の持続化給付金や融資事情に詳しいフリーライターの奥窪優木氏は、「民泊は新型コロナの直接的な影響を最も大きく受けた業種だといっていい」と指摘する。
新型コロナ詐欺

『ルポ 新型コロナ詐欺』では、持続化給付金の不正受給、偽造された税務署の収受印、ペーパーカンパニーを使った詐取、コロナ禍に乗じた悪徳商法、窮地の飲食店に不正受給をそそのかす悪質業者、マスク価格高騰の裏で暗躍していた国際犯罪組織……新型コロナ経済対策200兆円を喰い物にする連中の巧妙な手口に迫っている

 会社員の山岸行雄さん(仮名・42歳)も、2019年9月に住宅ローンを組んで都内に中古マンションを2200万円で購入し、その物件で民泊営業を開始した。11月と12月には、それぞれ25万円超の売上を記録し、「このままいけば利回り12%超えも夢ではない」と、期待していたという。 「ところが新型コロナの影響で、2020年2月以降は宿泊客がほぼゼロになってしまいました。今は月6万円のローン返済が重くのしかかっている状態。物件を売ろうにも買い手がつかない状態です」(山岸さん)

大打撃を受けるも支援を受けられず…一体なぜ?

 山岸さんは、まさにコロナショックの被害者といえるだろう。しかし、彼は政府による支援を受けることができないのだという。 「持続化給付金や家賃支援給付金は、『事業収入』か『雑収入』で確定申告している事業者が対象となっています。ただ、私は民泊事業の収入を『不動産収入』として申告していたんです。会社員の副業程度の民泊は、不動産収入で申告するのが一般的ですし、勤務先は副業禁止で、事業収入や雑収入だと副業と見なされる可能性があったためです。持続化給付金や家賃支援給付金の事務局にもかけあったのですが、ダメでした。一時は国を挙げて民泊を奨励していたのに、手のひら返しもいいところですよ」(山岸さん)  コロナの影響で訪日外国人客による民泊はほぼ皆無となった。なかには日本人向けの民泊やテレワーク需要に切り替え、徐々に集客できている民泊事業者もいるが、多くの事業者が苦境にあえいでいる。  実際、民泊物件の売却情報を見ると、民泊物件が格安で売りに出されている。例えばコロナ前の1月には55万円の収入があった都心の物件が2月には35万円、3月には15万円台と激減し、収支は大幅赤字。「大至急売却希望」の文字とともに、10万円で売りに出されていた。民泊のような事業や投資は自己責任が基本ではあるが、何の支援もなされないまま見捨てていいのだろうか。
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
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