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東京五輪“有観客開催”の試金石!チケット完売の全日本体操選手権観戦記

東京五輪開催をけん引する体操界の強い決意

 全日本シニア体操選手権大会から2週間あまり、同大会での感染事例やクラスター化は報告されずに迎えた10月12日、体操界は次の「先例」を作る発表を行ないました。11月8日、東京・国立代々木競技場において体操の「国際試合」しかも「有観客」での試合を開催すると発表したのです。記者会見では、IOC委員でもある国際体操連盟・渡辺守成会長が「誰かが先陣を切らないといけない」と意気込みを語り、強い決意を見せました。  海外選手には入国前の隔離とPCR検査、入国後も毎日の検査を義務付け、宿泊先と練習会場以外への移動は認めないという制限を設けました。国内選手にも自宅と練習場以外への移動や、ほかの大会との掛け持ちなどは不可とする行動制限を掛けました。そのために一部の選手は出場を希望しながらも認められないというケースも生まれましたが、そうした厳しい制限も「国際試合」という次の先例を作るためのもの。誰かがやらねば踏み出せない一歩を、体操が「全責任を負って」踏み出そうとしているのです。「こうすれば、できた」という先例を作り、ほかの競技を牽引するために。

「全日本」はできた、次は「世界」です!

 かつて東日本大震災のあと、東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一監督(当時)は「強さを見せよう」と選手たちを鼓舞したといいます。慰問や支援に奔走する優しさの次は、決して諦めない強さを見せるのが自分たちのつとめなのだと。これは困難な状況にあるときに、あらゆるアスリート・スポーツ界の人々に求められる心構えのような言葉です。

乗り越える「強さ」に見たアスリートのプライド

 アスリートが取り組んでいるのは社会にとって無益な行為です。どれだけ速いボールを投げられようが、空中で何回転できようが、食べ物や着る物を生み出せるわけではありません。しかし、アスリートが困難に挑み成し遂げる姿は、人生の困難に直面した人々に「頑張ればできるんだ」という元気を甦らせ、自分もまた困難に立ち向かおうとする勇気を引き出すものです。困難な状況だからこそ、あえて正面から立ち向かい、乗り越える「強さ」を示す。それはアスリートが愛され、尊敬され、社会において大切にされる理由のひとつでもあるはずです。  体操は今、その「強さ」を示そうとしている。  落下すれば大怪我をしかねない危険な競技に取り組む人たちが、その「強さ」で社会を牽引しようとしている。  その取り組みに自分も「観客」の立場で参加することができ、とても嬉しく思います。9月22日、「アマチュア競技」かつ「屋内競技」である体操が敢行した「全日本規模」の「有観客試合」は何事もなく終わりました。そこには確かに「観客」がおり、関係者の懸命な取り組みによって「安心して」観戦をすることができていました。その次の一歩、「国際試合」も無事に終えられることを願いたいと思います。空中で3回転することよりも難しい取り組みかもしれませんが、人間業とは思えないことをやってのけるのが体操というスポーツの真骨頂でもあります。  困難に打ち勝つ体操の「強さ」に期待します!
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