予想に必要な「記号・新聞用語」編
レースを理解するための基礎であるラインまわりの用語の次は、競輪予想をするうえで必要な言葉の基本を理解してみよう。実際にレースを見る際に新聞や出走表に記載されている選手の能力を理解すれば、見どころもバッチリだ。
【競走得点】
選手はレースの結果ごとに与えられる得点のこと。この得点はレースの格と着順によってあらかじめ決められており、格の高いレースほど、着順が良いほど高得点がもらえる。新聞や出走表に乗っている「競走得点」は一定期間の得られた点数を出走回数で割った「1走あたりの平均点」。レースの格も着順も考慮された点数のため、総合的な実力評価に使われやすい。ちなみに「競争得点」と書くのは誤りなので注意しよう。
【J(ジャン)・H(ホーム)・B(バック)】
J……ゴールまで残り1周半の先頭通過
H……ゴールまで残り1周の先頭通過
B……ゴールまで残り半周の先頭通過
J、H、Bそれぞれを一定期間内の回数を表している過去実績だ。この数値を見ることで選手がどれだけ長い距離を、どれだけの割合で仕掛ける傾向にあるのかを知ることができる。
【S(スタート)】
レースが始まった直後に先頭を走った回数のこと。初手から先頭でレースすることは「前受け」とも呼ばれる。前受けをすると、ペースアップして仕掛けるラインに包まれてしまうため、一旦下がるか包まれる前に出ていくかを迫られ、自分の好きなタイミングで仕掛けづらいデメリットがあるが、メリットは一旦下がってから仕掛けたいという意図をもっているときや、他のラインがやってきた際に内側から抵抗して好位置を狙ったりできる。
【逃げ・先行】
1周前後以上を先頭で仕掛けること。新聞などの成績欄ではこの戦法で2着以内に入った回数が記載されている。自力選手としてスピード、スタミナをフルに生かした戦法。強いならば包まれたり番手にブロックされたりしない「安全」な作戦だが、体力がなければ安定して成功しない。また、敢えてスローペースで逃げて後方で位置の取り合いを誘発、消耗させて逃げ粘る技もある。
【捲り】
半周前後の位置で先頭になるように仕掛けること。新聞などの成績欄ではこの戦法で2着以内に入った回数が記載されている。メリットはスピードを最大限に活かせること。先行しているラインを一気に飲み込む。見た目は美しいが、スピードがイマイチだと先行しているラインの番手にブロックされたり、他のラインと捲りが被るデメリットも。
【差し】
最後の直線で前の選手を交わすこと。新聞などの成績欄ではこの戦法で2着以内に入った回数が記載されている。ラインの番手、3番手以降の選手たちが最後に前を捕まえられるかの実績がわかる。車券の的中を増やすうえでここが最後の詰めの部分ともいえよう。
【マーク】
最後の直線で前の選手を交わせないこと。新聞などの成績欄ではこの戦法で2着以内に入った回数が記載されている。前を交わしていないので基本的に2着時のみ成立する。ラインとしてしっかり追走できたが前を交わせるスピードがなかったという実績だ。
【県・地区】
選手の所属している選手会の都道府県。同県だったり近隣県だったりすると練習などで交流があるため、調子や性格を理解しあっており、ラインを組むうえでの優先度が上がるため重要な情報として出走表に必ず記載されている。さらに近隣県同士での大きな単位に「地区」があり、現代の競輪においてラインは同地区同士で組まれることが多い。
【級班】
選手のクラスのこと。級はSとAとLに分かれており、SとAは男子の級、Lは女子の級である。競輪の場合は級が違う場合一緒に走ることはない。さらに級の中でも班が分かれており、多くのレースの出走条件に影響している。
男子 S級S班/S級1班/S級2班 A級1班/A級2班/A級3班
女子 L級1班(女子は現在L級1班のみの1クラス)
また、A級でも3班はチャレンジレースと言われ、A級1班2班とは分かれて走る。
【失格】
過度なブロックなどによる落車など、重度な違反行為があると失格となる。成績欄には回数か、失格で競走得点から減点される点数(1回3点)が記載されている。減点は半年ごとの級班を決める審査で使用される半年間の平均競走得点に対し行われるため、これが重なると級班を落とす原因となる。失格を持っている選手は競走が慎重になるかも?
実際に競輪を見てみようとネット観戦や競輪場などに出かけると、競輪ファンの会話から不思議な言葉が聞こえてくるだろう。「あいつ昨日でお帰りした」「ズブズブまで買ってない」そう、競輪の専門用語だ。今回はいくつもある競輪用語から主たるものを選んで掲載してみた。
【ズブズブ】
3車以上並んだラインの番手の選手が1着、3番手の選手が2着になること。ラインの先頭を走っていた自力選手が力尽きて後ろの選手に「ズブズブ」と2回差されている様子を示す。
【交わしの交わし】
ズブズブの変化系で3番手の選手が1着、番手の選手が2着になること。基本的に3番手を回る選手は番手の選手より格下であることが多いため「下剋上」な結果であり、配当はライン決着のなかでも高くなる傾向に。
【筋違い】
ラインで1,2着が独占できなかったときに使われる。筋とはラインの別称。3連単がある現在では「3着だけ筋違い」と使ったりすることも。
【大名マーク・無風番手】
先行したラインの番手が最後の直線までに他のどのラインも捲りを仕掛けてこれずに、ブロックの動きをする必要もない「余裕の状態」を指す。先行した選手が強かったり、後ろで別のライン同士がゴチャゴチャしていると発生しやすい。
【お帰り・帰郷】
正式な用語としては帰郷。失格や怪我などの理由で帰ること。失格した場合はその開催期間中は出走できなくなり、強制的にお帰りとなる。選手が減るため翌日から補充で選手を呼んだりすることになる。
【競り】
ラインの番手などの好位置を、他の選手が横から並走し、アタマをぶつけ合ったりして奪いに来ることがあり、その様子を競りと呼ぶ。外から競り込むと「外競り」、内側から競り込むと「内競り」となり、どちらが得意か、有利かは上級者は知っている。
【アンコ】
「外競り」と「内競り」を同時にやられると真ん中の選手は「アンコにされた」という。両側から攻められているため圧倒的不利。
【千切れる】
ラインといっても鎖で連結しているわけではないので、ラインの前を走る選手のスピードに追走できないことがあり、これを「千切れる」と呼ぶ。ラインの後ろの選手は風圧を避けられる面では楽な条件なのだが、スピードを出すためにはペダルを回す「回転力」がなくてはならない。差し・マークの決まり手が少ない選手は要注意?!
【ヨーロッパ】
ヨーロッパは4(ヨー).6(ロッ).8(パ)番車をまとめて呼ぶ用語。9車立ての際、6枠制の競輪では4〜6枠が2車となり、このときの偶数車番(4枠4番、5枠6番、6枠8番)は枠の実力均衡をはかるため競走得点の低い選手が入る。低評価なので上位に絡むと高配当となることが多い。
【メロン】
メロンは枠番の色が緑である6番車のこと。ネット普及前は限定的な言われ方だったが、ネット販売や中継が拡大したことにより競輪ファンの間で一般化した。6番車はヨーロッパの中でも競走得点が最下位の選手が入ることが多く、大穴の使者でもある。
【ガルパン】
これもネット普及により使われだした用語。「ガールズ一般戦」を略して「ガルパン」。現在1クラス制の女子によるガールズケイリンにおいて予選敗退した最終日一般戦は混戦波乱になることが多い。
【ハウス】
前後を走る自転車のタイヤが接触すること。前の動きに影響される仕方のない場合から、車間を見誤って追突してしまう場合までさまざま。めったに起きないため、プロ選手の技術の高さが伺える。
【チョイ差し】
番手の選手が余裕をもってゴール寸前で先行選手を差し交わすこと。節間トーナメントの競輪においてはラインの味方を増やして決勝を目指したほうが後々有利なため、差す選手に余裕があるときにはバテ始めた先行選手を決勝に行ける着順である2着や3着に残るように計算していることがある。ただ、チョイ差ししようとして届かないとダサい。
【お寺行き】
ラフプレーやルール違反をすると失格をはじめ、程度によって重注(重大走行注意)、走注(走行注意)の判定で違反点という点数が付与される。一定期間でこの点数が貯まると制裁の一つとして指定のお寺で修行を受けなければならない。「お寺行き寸前だからブロックしづらいだろうな」と、予想のポイントにもなる。
まだまだ用語はあるけれど
今回は競輪を見るうえで最低限知っておいて欲しい用語と、楽しむための用語を厳選した一部になる。好評であれば第二弾も出したいところだ。今回紹介した用語だけでもだいぶ競輪を見るうえで理解の短縮になるのではないだろうか。人の心を読む遊び、競輪。誰がどう仕掛けてどう利用するか……極限の心理バトルを是非楽しんでいただきたい。
文・構成/佐藤永記
公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「
競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。