瑛人が語る『香水』大ヒットの次 「またハンバーガー店で働くのもいいな」
’20年で最も日本で流行した曲といって、真っ先に思いつくのは「香水」だろう。同曲内に流れる「ドルチェ&ガッバーナ」のフレーズやMVの再生数2億回という驚異的な数字で一躍有名になったのは、シンガー・ソングライターの瑛人(23)。
ハンバーガー店で働く一人の青年がネット上にアップした曲が、その年一番のヒットソングとなり、紅白初出場の快挙を成し遂げたその軌跡に迫った。
(編集部注:インタビューは12月中旬に行われたものです)
――レコード会社や芸能事務所に所属しないインディペンデントのアーティストが国内チャート1位になったのは、瑛人さんが初めてといわれています。個人によるストリーミング発の曲として話題になった「香水」ですが、この曲をネットにアップしたきっかけはなんだったんですか。
瑛人:当時、僕は音楽を学ぶために、ルンヒャンさんという方が主宰する音楽ゼミに通っていて、その授業でレコーディングしたのが「香水」です。で、周囲から「TuneCoreっていう音楽配信サイトがあるんだけど、そのサイトに曲をアップすれば誰でもSpotifyやAppleMusicに配信できるよ」とアドバイスされた。パソコンから自分の曲を多くの人に聴いてもらえるなんてすごいなぁと思って、早速知人に協力してもらいながらMVを作り、’19年の4月にアップしました。
――その後、ブレイクを果たすまでは1年近いタイムラグがあります。
瑛人:はい。アップして最初の1〜2か月は再生数が8000回くらいでしたね。その後、少しずつ再生数が伸びて、7万回くらい再生されるようになりました。TuneCoreは毎月の再生数に応じてお金がもらえるので、再生数が伸びてきたら「ブレイクするかも」と思うより先に、毎月音楽でお金が稼げることのほうが嬉しくって(笑)。
7万回再生までいったときは、毎月4万5000円くらいもらえるようになったので、ハンバーガー店で働くフリーターの僕にはすごくありがたかった。「これを貯金して自主制作でアルバムを作ろう!」と喜んでいる感じでした。
――「売れ始めている」と実感したのはいつ頃?
瑛人:’20年の2月くらいに横浜駅の西口で飲んでいたら、知らない人が「香水」を歌っていたんですよ。「え、なんでこの歌知ってるの?」と聞いたら、「俺の地元で流行ってるんです」と言われて、めっちゃテンションが上がりました。
そして、4月後半くらいにTikTokを見たら、「香水」をカバーしてくれる人がいっぱいいて。さらに5月から、急に再生数が100万回以上に跳ね上がって、気づけばビルボードの1位になって。最初は「システムが壊れたのかな?」って思いました(笑)。
――ネットにアップする一方で、ライブ活動などはしていたんですか?
瑛人:ほぼしてないです。一人で横浜駅西口でストリートライブをしたこともありますが、恥ずかしくて一度きりでやめてしまいました。
――本当にネットだけを糸口に広まったんですね。アーティストやタレントによるカバーも話題になりましたが、ご覧になっていますか?
瑛人:楽しく見てます。本当にいろいろな人が「歌ってみた」をSNSにアップしてくれた影響は大きかった。なかでも、チョコレートプラネットさんの動画は完成度が高くてびっくりしました。個人的には、かまいたちさんのシュールな動画や狩野英孝さんやココリコ遠藤さんが「ドルガバドルガバ」と歌い続ける動画も好きです。
――ずばり、この曲が人気になった理由はなんだと思いますか?
瑛人:それ、僕が一番わかってないです(笑)。皆さんがヒットの理由を「嗅覚という本能を刺激する歌詞がよかった」「ドルガバが印象的だった」とか分析してくれているんですけど、特に何かを狙って作ったわけじゃない。曲を作っているときは「今後の人生が心配だから売れたいな」「ジャスティン・ビーバーがリツイートしてくれて100万回再生されないかな」なんて思ってました(笑)。

「香水」が売れた理由は、僕が一番わからない
横浜駅で知らない人が口ずさんでいて驚いた

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