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1月の電気料金が10倍に!? 新電力会社と契約で驚きの請求書

大寒波の影響で、これまで安さを売りにしてきた新電力の電気料金が10倍超まで高騰。ここにきて新規契約を停止する事業者が相次いでいる。首都圏ブラックアウトの可能性も拭えないなか、新電力の窮状をリポートする。

電力逼迫危機を招いたのは5年前の電力自由化だった

ブラックアウト

2018年の北海道胆振東部地震でブラックアウトしたすすきのの様子 写真/朝日新聞社

 ほとんど報道されていないが、実は、「十年に一度」の寒波が到来し、日本の電力需給は逼迫。ブラックアウト(大停電)が起きてもおかしくない危機的状況が続いている。  逼迫の原因は、日本の発電量の4割を占めるLNG(液化天然ガス)火力発電の燃料不足だ。エネルギー政策に詳しい常葉大学教授の山本隆三氏が説明する。 「日本への供給が不足しているのは、中国が大気汚染対策で石炭火力発電を減らしており、環境負荷の少ないLNGの輸入を急増させているから。韓国も同様で、東アジア諸国の需要が高まっている」  さらに、LNG産出国の設備の故障、コロナの影響によるパナマ運河の渋滞など、偶発的要因も重なったという。山本氏が続ける。 「LNGはせいぜい2、3週間しか貯蔵できず、入着が遅れた結果、電力需給が逼迫した。1月初めには、供給予備率が通常必要な8~10%を下回り、最低限必要な3%も割り込む綱渡りの状況で、いつ大規模な停電が起きてもおかしくなかったのです」
ブラックアウト

12月半ばから、東電管内の電力使用率は上昇を続け、停電の危険水域とされる90%台後半を連日記録していた

 実際、年末年始に電力使用量は急上昇し、九州電力管内では使用率が100%にもなる異常事態が続いていた。
ブラックアウト

九州電力管内では、1月10日に電力使用率が100%に到達。九州に設備が多い太陽光発電は電力供給に貢献できなかった……

危機の背景には構造的要因

 記憶に新しいのは、’19年の台風15号だ。千葉県全域で停電が発生。93万世帯で電気がストップし、復旧まで2週間を要する地域もあった。鋸南町在住の小倉久美さん(仮名・26歳)は、こう振り返る。 「停電は3日間でしたが、夏なのにお風呂に入れず、ストレスも衛生的にもキツかった。それに、何をするにも明るい日中に済ませなければならない。地域全体が停電すると基地局もダウンするので、充電できたとしてもスマホは使えなかった。移動基地局車が出ていたことを後で知ったけど、そもそもその情報を知る術がない。これが冬だったらと思うと、ゾッとしますね……」  人や大企業が集中する首都圏で、真冬に大規模停電が起きれば、多くの人命が危険に晒され、経済損失も甚大だ。LNG不足は徐々に解消されつつあるが、危機の背景には構造的要因が横たわっているという。環境ジャーナリストの石井孝明氏が説明する。 「今回の寒波による電力逼迫は、①過大評価した再エネの振興政策、②電力自由化、そして、③原発の長期停止という3つの要因が複合的に絡んでいる。  ①の再エネは、脱原発の世論に後押しされ、世界一手厚い補助金(固定価格買取制度)によって、太陽光発電の設備容量は20倍に増えたが、今回の寒波では悪天候で発電できなかった。一方で再エネが急増したため、既存の電力会社は火力発電設備の維持ができなくなった。  ②の電力自由化も、3・11後、電力会社の地域独占や総括原価方式が諸悪の根源とする空気にポピュリズム気味に乗った民主党政権(当時)が決めた政策。だが、電力会社は地域独占などの特権を許される代わりに、安定供給を義務づけられていた。いわば自由化によって、電力の安定供給が揺らいでいるのです」  ’16年の電力自由化により、それまで電力会社が独占していた電力の小売りを、新規参入した多くの新電力会社ができるようになり、消費者は電力会社や料金メニューを自由に選べるようになった。
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電力卸市場が爆騰! 新電力の倒産が相次ぐ!?
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