現在の客層は常連とご近所さん
――『エビスコ酒場』では、プロレスの半券を持っていくと割引がされるなど、独自のサービスがありましたが、コロナ禍で利用者に変化はありましたか。
「前は後楽園ホールから新宿に立ち寄って、うちの店舗を周ってくれる人が多かったんです。コロナが感染拡大してからは、後楽園からは来なくなった。ほぼその流れがなくなりましたね」
――現在の客層は、どういう人たちが多いのですか。
「プロレスファンでも
限られた常連さんです。あとは
近所の方ですね」
――そこまで苦境の中、飲食店を続けるのはなぜなのでしょうか?
「1回目の自粛中は、CyberFightではなかったので(※CyberFightに合併前なのでDDTフーズ)、持続化給付金が出たんです。今、上場企業のグループ会社になったので、飲食店向けの一日6万円の補償金が出ない(※取材時。現在は大企業にも支給されることが決定した)。飲食の部分でいったら、大企業がやっている飲食は1円も出ない。今回、全店舗休業するわけにはいかないし、休業しても設備費はかかるので圧倒的に経営していく方がいいんです」
――今回の緊急事態宣言は、店としてはどのように対応しているのですか。
「今回は、都の条例に従って20時までには店を閉める。お酒の提供は19時までという対応を各店舗で守っています。バー形式の『ドロップキック』は、
ほぼ休業してオンライン営業の配信を行っています」
――緊急事態宣言時で、ユニークな試みだと思ったのが飲食店舗のオンライン営業なのですが、どのようにして思いつかれたのでしょうか。
「コロナで緊急事態になったあたりで、『やばい、店が潰れるかも……』って、どうするべきか話し合ったんです。
アイドルがオンライン握手会をやっているのを高木が見かけて。『プロレスでも(オンラインで)やろう。飲食店事業部でもやろう』と提案したんです。『なにかやらないと、耐えているだけだと潰れるだけだから』と言って始めました」
――どのようなやり方で、オンライン営業をおこなっているのでしょうか。
「最初にオンライン通販サイトを立ち上げたんです。そこで、各店舗で使える食事券を売り出したんです。売り上げを先に確保しておこうというのもありました。休業している間は、家賃もかかるし、何かしらのお金を持っておかねばならないという事情もあったので。その通販サイトで、“オンライン営業の参加券”や“選手へのごちそう券”を購入できるようにしました。そこで参加券を買ってくださった方に、オンライン営業に参加できるZoomなどのURLを送っています」
――店舗を開けている現在も、オンライン営業は続けているのですか。
「今も、月に10日以上はオンライン営業を行っています。ゲストの選手を呼んで、スタッフ2、3人でわいわい飲みながらね。お客さんも、トークを聴くだけではなく、画面を見ながらチャットなどで参加できます」
――コロナ禍がきっかけで、変わったことはありますか?
「コロナになってすごく売り上げは落ちたけど、オンライン営業っていう新しいやり方ができたのは大きいかなって。今はオンライン営業が主軸で、第四の店舗になっている。逆に
それが無かったら、潰れていたかもしれません。
また、前回の時はランチ営業はやっていなかったんです。基本、全店舗17時から0時までの営業でやっている店だったんで。今回の緊急事態宣言で、20時までしか営業できなくなった時に、『エビスコ』も『スワンダイブ』もランチ営業を始めました。『スワンダイブ』は、ちょうどプロレスリング・ノアの丸藤正道選手のカレーや、大仁田厚選手のコーヒーも提供し始めていたので、ランチをしようってなりました」
丸藤正道選手のカレー
――オンライン営業に、ランチ営業。窮地をチャンスに転換していますね。
「国からの保障がないとなると、なりふり構ってられないので。『エビスコ』は、今までデリバリーをやらないようにしていたんです。店長のKUDO(注:DDT所属プロレスラー)の方針で、炭火は焼きたてがいちばん美味しい。冷めたお肉は少し風味が落ちるので、配達して冷めたものをお客さんが食べて、美味しくないと思われるのが嫌だったんです。でも近々、デリバリーも始めようと思っています。デリバリー向けの商品も開発していきます」
コロナウイルスの収束が見えていない現在。新しい生活様式の中で、飲食店の灯を消すことなく、前向きに健闘する姿がそこにはあった。<取材・文/池守りぜね、取材協力/DDTプロレスリング>
出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X(旧Twitter):
@rizeneration