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乗降客がほぼゼロ…宗谷本線の廃止12駅。駅舎にある「クマ出没注意!」に恐怖

上幌延駅(かみほろのべ)

上幌延駅

上幌延駅

 安牛駅から2駅4.9キロの地点にある上幌延駅(北海道幌延町)も貨物用車掌車を待合室に使用している無人駅。70年代には数十人が暮らし、駅前に旅館や駐在所、理髪店もあったが、現在はわずかに1世帯のみ。ここも集落があった面影すら消えている。
上幌延駅

クマ出没注意の張り紙

 しかも、待合室には今も襲いかかりそうなヒグマのイラストが入った「クマ出没注意!」の貼り紙。筆者が数年前の秋に訪れた際にはエゾジカやキタキツネを駅周辺で目撃しており、人間よりも野生動物の数のほうが明らかに多そうだ。
上幌延駅

待合室

 ちなみに幌延町には宗谷本線では最多なる8駅があり、3月で廃止となる同駅と安牛駅をはじめ7駅が無人駅。鉄道ファンの間では秘境駅の宝庫として知られており、その中には以前紹介した物置を待合室として使っている糠南駅などマニアの間で有名な駅もある。駅同士の間隔が比較的短い区間だったので歩いて巡る鉄道ファンも多かったが、今後はそれも難しくなるかもしれない。

徳満駅

徳満駅

徳満駅

 そして、最後に紹介するのは、宗谷本線の廃止駅で最北の北緯45度8分に位置する徳満駅(北海道豊富町)。かつては反対方向からの列車との待ち合わせが可能な2面のホームを有していたが、現在あるのは片側ホームのみ。1926年の開業当時のままだった駅舎も2000年に取り壊されてしまった。
徳満駅

プレハブの小さな待合室

 現在設置されているプレハブの小さな待合室は、駅舎撤去後に設置されたもの。スペースは約3畳分と狭いが、地元の方が作ったと思われる「ようこそ」の文字が入ったハンドメイドのリースが壁に飾られており、冬場で室内も寒いはずなのにどこか温かみを感じる。 徳満駅 なお、駅員が常駐していた国鉄時代には「徳で満たされる」といかにも縁起がよそうな駅名だったことから切符を記念に買い求める者も多かったという。  一気に12駅が廃止になり、今後は41駅となる宗谷本線。その半数以上は無人駅で秘境駅も複数もあるが、実は路線の廃止に関する噂も以前から流れている。駅には「頑張れ宗谷本線」と書かれたポスターも貼られており、この先もずっと存続するかは不透明だ。  すでに半世紀の間に鉄道網の総距離が4000キロからほぼ半分に減ってしまった北海道。これ以上の駅や路線の廃止は避けてほしいところだが、この流れを抑えるのは難しいのかもしれない。<TEXT/高島昌俊>
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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