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「昆虫食」は牛豚や魚を救う!地球温暖化、未来の食糧危機を回避する

生活様式や価値観が目まぐるしく変わる現代。テクノロジーの進化によって、それはますます加速度を増している。海水温の上昇に起因するサンマの記録的不漁が最近話題となっているが、地球温暖化は今後も加速すると予測されており、日本の食卓に与える影響が心配だ。未来の食糧危機を回避することはできるのか、科学技術ジャーナリストの赤池学氏に聞いた。

「昆虫食」は牛豚や魚を救う!日本は先端技術で食糧不足ナシ

生き残り戦略

世界でタンパク質不足が叫ばれ、昆虫食に注目が集まるなかで、日本はバイオマス研究により虫を育て、それを家畜の餌にする流れに

「この先の10年は、バイオテクノロジーを活用した新しい形の食糧生産が日本人の食生活を支えていくことになります。特に有用な技術として注目すべきは、昆虫食。といっても、昆虫を人間が直接食べるのではなく、家畜や養殖魚のエサに使うということです」(赤池氏)  昨今、廃棄物を極力出さずに資源を循環させる経済の仕組み(サーキュラー・エコノミー)への関心が高まっているが、この観点からも意義深いと赤池氏は言う。 「日本発の『ムスカ』というベンチャー企業が進めているプロジェクトですが、まず、家畜の糞に同社が独自に品種改良したイエバエの卵を投与します。その8時間後にウジ虫が孵化し、畜糞を食べて有機物を分解し続ける。  すると1か月後には、畜糞は立派な農業用堆肥に様変わり。ウジ虫はサナギになる際に自ら畜糞から出てくるので、これを回収・乾燥させて家畜や養殖魚のエサにするんです」

ウジ虫は抗菌性のタンパク質を豊富に蓄えている上に、栄養価が高い

 日本で年間に排出される産業廃棄物は3億8000万t。そのうち2割を畜糞が占めており、ウジ虫のエサには事欠かない。 「しかもウジ虫は抗菌性のタンパク質を体内に豊富に蓄えている上に、栄養価が高い。これを与えて魚を育てると耐病性が格段にアップして養殖効率が上がることが、同社と愛媛大学の共同研究で実証されています。  日本は欧米に比べて昆虫の研究が進んでおり、虫が保有するタンパク質を牛豚の飼料として生かす技術は日本の専売特許になると睨んでいます」  10年後にはこうした昆虫を活用した食糧生産が大規模化され、一般の人々も恩恵を受けることになるだろうと赤池氏は言う。  世界はタンパク質不足に陥り、昆虫食を始めるなかで、日本人は国産の牛、豚肉を食べていけるのだ。
赤池 学氏

赤池 学氏

【科学技術ジャーナリスト・赤池 学氏】 ユニバーサルデザイン総合研究所所長。環境・福祉対応の製品や施設、地域の開発に携わる他、農水省バイオマス・ニッポン総合戦略推進委員などを歴任 <取材・文/山田剛志(清談社)>
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