仕事

藤井聡太の師匠に学ぶ「部下や後輩の育て方」

自発的な成長とは?

 ビジネスやスポーツの世界では、師匠の存在が欠かせません。特にビジネスの場合、師匠は「メンター」という横文字で呼ばれ、昨今はメンター(助言する人)とメンティー(助言される人)が一対一で対話する、『メンタリング』という若手の育成法が話題になっています。  メンタリングが目指しているのは、部下や後輩の自発的な成長です。そのため、「これをしろ。あれをしろ」といった具体的な指示や命令は下しません。杉本八段も「将棋は自主性が大事で丸暗記して上達するわけではない」と考えており、メンタルを重視するという点で相通じるものがあります。そして、このメンタルに影響を与えるのは、理屈ではなく人間性です。  杉本八段の「心配していないから」という励ましについて、藤井棋聖は「ほっとした」と後になって打ち明けたと言います。このように誰かの言葉が誰かの心に響くのは、その二人の間に共感が働いているからです。  杉本八番は自分の師匠のことを意識した時に、「弟子の未来を信じる」という心構えを持ちました。そして、その心構えを持って、弟子である藤井棋聖に接しています。自分を導いてくれた師匠を意識することで、自分も同じように弟子を導けるようになるのです。

誰かを教え育てたいならば自分の過去を振り返るべし

 教え慣れていない人の場合、こうした人間関係が作り出す「心の世界」というものを見落としがちです。すでに色々なことができるようになった今の自分を基準にして、「こんなこともできないのか」と若手をこき下ろしたりします。それでは若手は育ちません。  誰かを教え育てたいならば、「自分も昔は未熟で、色々教えてもらった」という過去を振り返ってみてください。そうすれば、若手が何で悩んでいるかもわかり、自分が何を言えばいいのかもわかるようになります。  心配いらない。大丈夫だ。こうした心理的なアドバイスは誰にでも言えます。しかし、誰が言っても同じではありません。杉本八段が藤井棋聖を励ました時のように、自分の過去を振り返っているか、自分が誰かにそう言ってもらえた時のことを思い出しているか。その意識の有無によって、相手の心に響くかどうかが決まります。  それが言葉の重みというものです。後輩や部下との接し方に悩んでいるのなら、ぜひ参考にしてみてください。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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