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米国バイデン政権の長期戦略GT2040で「主要国」から消えた日本。今後の戦略はあるのか?<日本金融財政研究所所長・菊池英博氏>

バイデン政権は対中姿勢を明らかに

 この報告書が発表された二日後に、バイデン大統領は上下両院で施政方針演説を行い、民主主義国家としてのリーダーシップ強化のために、外交面では専制主義国家である中国と政治・経済・人権擁護の面で競争し、経済安全保障を強化する方針を発表した。  内政面では大きい政府への転換を志向し、「2兆ドルの米国雇用計画」「バイ・アメリカン政策」で中国の追い上げを振り切り、産業の米国回帰と米国の技術と製品の優位性を維持強化する方針を打ち出した。

「主要国」脱落組の動向は?

 GT2040で「主要国から脱落する」と予想される英国は、すでにEU離脱後の「グローバルブリティン」という新しい構想を立てており、中国の拡張政策に対抗する枠組みとして6月のG7をD10(G7プラス印度・豪州・韓国)に拡大して開催することを昨年12月に決めており、民主主義の元祖としての存在感を示している。  一方日本は、4月16日の日米共同声明で日米同盟の強化を掲げ、「自由で開かれたインド太平洋を作る」ために日米豪印が連携して中国の不法な海洋権益に対する活動に反対し、「台湾海峡の平和と安定の重要性、両岸問題の平和的解決を促す」と明記されている。  政府筋に近い河野克俊氏(元統合幕僚長)は、「台湾紛争は新安保法制でいう存立危機事項にあたるので、台湾有事の際には自衛隊が米軍支援に回るだろう」と述べている(「日曜スクープ」BS朝日4月3日)。もしこうなれば、自衛隊は中国軍と交戦することになり、日本は国家滅亡の危機に瀕するであろう。  戦後の日本が成長できたのは、平和憲法のもとで専守防衛に徹して絶対に戦争しない国として評価されてきたからである。  日本は、原点に返って、集団的自衛権行使容認を放棄し、絶対平和主義国家としての存在感を高める戦略に戻り、中国を敵視せずにアセアン諸国とも連携して太平洋のシーレンを確保できる外交を展開すべきではないか。  首相交代、政権交代による閣議決定で可能である。 <文/菊池英博 記事初出/月刊日本2021年7月号より> きくちひでひろ● エコノミスト。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)を経て1995年文京女子大学教授に。現在は日本金融財政研究所所長
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2021年7月号

【特集1】【特集1】言論の府・国会は死んだ
【特集2】「コロナ五輪」強行! 翼賛メディアの大罪
【特別インタビュー】1億5千万円問題 検察審査会が安倍晋三を追いつめる 弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎


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