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1億5000万円問題、検察審査会が安倍晋三を追いつめる<元東京地検特捜部検事・郷原信郎氏>

―[月刊日本]―

誰が資金提供を指示したのか

賄賂

写真はイメージです

―― 2019年の参議院選挙の際、広島選挙区から出馬した河井案里氏の陣営に、自民党本部から1億5000万円もの資金が提供されました。先日、自民党の広島県連が党本部に対してこの資金の使途を解明するように求めたことで、このお金に再び注目が集まっています。郷原さんはこの資金が明らかになった当初から、その背景を追及してきましたが、改めて1億5000万円の問題点を教えてください。 郷原信郎氏(以下、郷原) まず誰がこの資金の支出を決定したのかという問題があります。自民党は案里氏の陣営に1億5000万円の資金を提供しましたが、同じ広島選挙区から出馬して落選した自民党の溝手顕正氏には、1500万円しか入金していませんでした。河井夫妻が多額の現金買収の公職選挙法違反で逮捕されたため、1億5000万円が買収資金に充てられた疑いが生じ、資金提供を誰が決定したのかが問題になったわけです。  この資金について、自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「私は関係していない」と発言しました。会見に同席していた林幹雄幹事長代理も「当時の選挙対策委員長が広島を担当していた」と述べました。これに対して、当時選対委員長を務めていた甘利明氏は「私は1ミリも関与していない。もっと正確に言えば、1ミクロンも関わっていない」と全面否定しました。その後、二階氏は支出を決定した責任者について改めて問われ、「党総裁および幹事長だ」と述べました。  通常であれば、国政選挙の際に資金提供を差配するのは幹事長です。しかし、二階氏の「私は関係していない」、「党総裁および幹事長に責任がある」という一連の発言を踏まえれば、誰が河井陣営への資金提供を指示したかは明らかです。二階氏以外に資金提供を指示できるのは、当時自民党総裁だった安倍晋三氏しか考えられません。  このことは安倍氏と克行氏が単独面会を繰り返していたことからも推測できます。新聞報道と首相動静を突き合わせると、自民党本部は2019年4月15日に案里氏が代表を務める政党支部に1500万円を入金していますが、その2日後に克行氏は安倍氏と単独で面会しています。また、自民党は5月20日にも案里氏陣営に3000万円を入金していますが、その3日後に克行氏は安倍氏と単独面会しています。さらに、6月10日に自民党が克行氏の政党支部に4500万円、案里氏の政党支部に3000万円の資金提供を行うと、その10日後に克行氏は再び安倍氏と単独で面会しています。その後、同27日にも克行氏の政党支部に3000万円の資金提供がなされています。  もともと自民党の広島県連は溝手氏支援で一本化されており、案里氏の擁立に強く反対していました。そのため、案里氏たちは広島県連の支援を全く受けられない状況にありました。克行氏が安倍氏にそのことを伝えていなかったとは思えません。克行氏はおそらく、「広島県連が選挙協力を全て拒否し、本来の役割を果たしていない。そのため、自分が県連の仕事を代行し、市議や県議たちに党からの交付金を配らざるを得ない」といった話をしたのでしょう。こうした事情から、安倍氏は1億5000万円の支出を決定したのだと思います。

買収目的交付罪の嫌疑は十分

―― 安倍氏が河井陣営に1億5000万円の資金を提供することを決定したとすると、どういう法律に触れるでしょうか。 郷原 克行氏は自民党本部から受け取った1億5000万円を、地元の県議や市議たちに配っています。公職選挙法では、(a)当選を得る、または得させる目的で(b)選挙人または選挙運動者に(c)金銭、物品その他の財産上の利益を供与した場合、買収罪が成立するとしています。  (a)について、克行氏は裁判で、県議や市議にお金を配ったのは案里氏を当選させるためだったと認めています。(b)についても、克行氏がお金を渡した県議や市議が、参議院広島選挙区で選挙権を有する選挙人であることは明らかです。また、(c)に関しては、公職選挙法の規定する「供与」とは、「使途を限定せず、自由に使えるものとして、相手に得させること」、つまり「差し上げること」を意味します。克行氏は党勢拡大や地盤培養行為の一環として地元の政治家たちに政治資金を寄付しただけだと主張していますが、当選させるために金銭を供与したのであれば、党勢拡大や地盤培養といった政治活動の性格があろうがなかろうが、買収罪になります。克行氏は「地元の政治家たちに現金を差し上げた」と繰り返し述べているので、買収罪は十分成立しうると思います。  問題は、河井陣営に資金提供した自民党本部の側に、そのお金が案里氏に当選を得させる目的で選挙人や選挙運動者に供与されるという認識があったかどうかです。安倍氏が克行氏と面会したときに、克行氏から誰にいくら供与するのか聞いていたとすれば、供与罪の共謀になります。  安倍氏がそこまで具体的に認識していなくても、選挙資金を受け取った克行氏がそのお金を選挙人たちに供与することを認識した上で、克行氏に対して資金提供を行ったのであれば、供与させる目的をもって金銭の交付を行ったとして買収目的交付罪が成立する可能性があります。そのお金が誰にいくら渡されるかまで詳細に把握していなくても、「克行氏が、案里氏を当選させる目的で地方政治家にお金を差し上げる」と認識した上で、その資金を交付すれば犯罪は成立するのです。私は30年あまり前、検察官として当時唯一の衆院一人区だった奄美群島区で交付罪の事件を担当したことがありますが、今回の件も犯罪の嫌疑は十分にあると思います。
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検察に安倍氏を逮捕する度胸はない
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月刊日本2021年7月号

【特集1】【特集1】言論の府・国会は死んだ
【特集2】「コロナ五輪」強行! 翼賛メディアの大罪
【特別インタビュー】1億5千万円問題 検察審査会が安倍晋三を追いつめる 弁護士・元東京地検特捜部検事 郷原信郎


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