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「緊急事態条項」が必要だという嘘と勘違い<法学者・小林節氏>

―[月刊日本]―

憲法は「緊急事態」対応を認めている

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写真はイメージです

 最近まで、改憲論と言えば9条に関するものがほとんどであった。しかし、東日本大震災とコロナ・パンデミック(大感染)を体験した辺りから、「緊急事態条項」の新設を主張する声が大きくなってきた。  曰く、「大災害に直面したら、人権を停止して、権力を一元化して、国家として迅速に対応することが必要で、それを想定した緊急事態条項が現憲法にはない。」  確かに、大災害に直面した場合には、国家としては迅速に決断して、強制的に国民の移動を制限したり国民の財産を公のために用いたりすること(つまり人権の制限)は必要で有効である。  しかし、現行の憲法にはそれを可能にする規定が既に存在する。12条は「この憲法が国民に保障する権利(つまり人権)は常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と規定し、13条は「国民の権利は、公共の福祉に反しない限り、国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定している。  ここで言う「公共の福祉」とは、全ての国民がそれぞれに人権を行使して幸福を追求するために不可欠な前提としての安心・安全な社会状況のことである。震災の被害を除去し得た状態やパンデミックを克服し得た状態が「公共の福祉」そのものであることは言わずもがなである。

だから緊急事態法制は既にある

 だから、わが国には、現に災害対策基本法、感染症対策基本法等の緊急事態法制(法令群)が存在する。その中で、強制入院(行動制限)や私有財産の強制的な公用化(財産の公用収用)が許されるのは、正に憲法12条と13条が存在するからである。  これで、緊急事態条項が必要だという根拠の一つ、人権制約の根拠条文の必要性……が根拠にならないことが明らかになった。
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問題なのは「政治の愚かな対応」のほう
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