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NFTアートが1300万円で落札されたVRアーティスト「デジタル資産を保有するのが当たり前になる」

器用貧乏・紆余曲折は無駄じゃなかった

せきぐちあいみ

Tilt Brushを使って制作するせきぐちあいみさん(提供写真)

 せきぐちさんは、芝居やアイドル、ダンス、歌手など過去に多くのことを経験したからこそ、「VRが本当に自分に向いていると実感することができた」と話す。 「私自身、昔はよく『器用貧乏になるな』『なんでも無難にこなすだけでは突出できない』と言われていたんです。でも本当に自分が興味持ったものについては、とことんやり通す性格だったので、色々なものへ手を出していました。それがVRに出会って以来、過去に経験した点と点が繋がり、VRアーティストとしての活動に全て活きている。  芝居やダンスでは人を魅了する作品づくりの視点を学んだし、YouTubeでは奥行きのバランスやストーリー性を意識しながら、客観的な見方を持って動画編集をしていました。これまで地道に積み重ねてきた努力が、VRを知ったことで一気に花開いた感じですね」  さらにVRアートを始めたことで『ものの見方や捉え方』も変わったそうだ。 「VR空間での創作活動はある種、360°視点で世界観を考えないといけないので、日頃から周囲にあるものを色々な角度から観察するようになりました。以前は、ただなんとなく見ていた光景も、見方を変えることで全く違った魅力の発見に繋がり、学ぶことが多いんです」

日本の伝統文化が織りなす「空間美」から着想を得ている

 こうしてVRアートに目覚めたせきぐちさんは、次々と作品を発表。  唯一無二ともいえる独特の世界観は、国内のみならず海外でも高い評価を得るようになっていったのだ。そんなせきぐちさんが、VRアーティストとして日々活動するなかでのアイデアの源泉はどこにあるのだろうか。 「日本の伝統文化が持つ、調和を大事にした空間美から着想を得ることが多いですね。日本庭園や神社などは、周囲の自然や景観との均衡を保ちつつ、見る角度によって異なる空間美を醸成している。これは古来から備わる日本人の美的センスであり、デジタルでは表現できない魅力だと感じています。ただ日本人だからと『クールジャパン』を打ち出し、打算的な考えを持ってやっているわけではありません。  昔から、日本の伝統文化に備わる美の捉え方や感性に心惹かれていたり、日本人の類い稀な美への探究心に憧れを抱いていました。それが今の創作活動でも、ひらめきやインスピレーションに繋がっていると考えています」
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約1300万円で落札されたNFTアート
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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