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野党が勝つために、野党支持者よ「大人」になれ<著述家・菅野完氏>

―[月刊日本]―

安倍・菅が壊した総理大臣の「当たり前」

国会議事堂 衆参両院の代表質問を見ていて驚いたことがある。  与野党の質問者が議場中央の演壇で質問演説をするあいだ、岸田文雄首相が顔だけではなく体ごと演壇に向け、質問者の顔を見ているのだ。しかも、時折、うなずいたり首を横に振ったりしながら質問に対する傾聴姿勢を体全体で表現している。なんということだ。内閣総理大臣が、国会の質問を真剣に聞いているではないか!  安倍・菅両政権のこの9年間、代表質問の際の内閣総理大臣といえば、退屈そうな顔をしてペンで指あそびをしたり手元の紙を弄ったりするのが常態化していた。そしてこの醜悪な総理の態度を「総理大臣は多忙を極める。その総理が退屈な国会審議に臨んでいるんだから退屈そうな顔をして当然だ」という声や「総理大臣ともあろうお方の貴重なお時間を、国会審議ごときの非生産的な時間に費やすとは何事か」との声で擁護する向きさえあった。  しかし本来は違うのである。過去の国会審議動画を見て再確認したのだが、総理大臣がこのような態度で国会に臨むようになったのは、第二次安倍政権以降に過ぎない。傲岸でならす麻生太郎でさえ、総理大臣時代は、今の岸田首相と同じく、顔を演壇に向け頷いたり首を捻ったりして傾聴姿勢を表現している。ほんの10年前まで、それが当たり前だったのだ。  国会は国権の最高機関。主権者たる有権者が選出した代表たちが座る場所なのだから当然だ。その国会議員たちが国権の最高機関たる国会の議事運営を円滑なからしむるために議長を互選し、然る後、国政の執行分野を担当する公僕の長としての内閣総理大臣を選出する。あくまでも、議員が主人公。そして議長がコンダクターである。  いかに権限や権力があろうとも、内閣総理大臣は国権の最高機関たる国会にその職務内容を報告しその報告内容を吟味“していただく”下僕にすぎない。それが議会制民主主義と議院内閣制の根幹思想だ。衆参両院の本会議場における閣僚席が国会の主人公である議員席から見て左側、つまり下手側に設置されているのはこの根幹思想を具現化しているからに他ならない。だからこそ歴代の内閣総理大臣は、代表質問の際に全身で傾聴姿勢を表現した。それが当たり前なのだ。  安倍内閣・菅内閣の9年間でその「当たり前」が崩れた。しかし逆に言えば、「当たり前」が崩れたのは安倍・菅たった2代の話であり、安倍・菅の9年間が異常だったに過ぎないということでもあろう。ただ、この9年間でその異常さが常態化してしまった。国会を見ている我々が異常さに慣れてしまったのだ。だとすれば、本当に驚くべきことは、代表質問に傾聴姿勢を示す岸田首相の姿ではなく、その姿を見て驚いてしまっている自分自身の姿なのだろう。当たり前の職責を果たす内閣総理大臣を見て驚くほどまでに、劣悪な状態に慣れきってしまっていたのだから。

岸田内閣の支持率が低い理由

 岸田内閣の支持率は低い。報道各社は50%台の数字を報告している。新内閣誕生直後にここまで内閣支持率が低いのは麻生内閣以来のこと。これではとても「ご祝儀相場」とは呼べない。しかしこれを不思議に思う必要もないだろう。  この9年間、内閣総理大臣といえば、目つきと態度が悪く、教養なさげで、落ち着きのない、いわばゴロツキのような人間が就任するものと相場が決まっていた。内閣総理大臣だけではない。大阪を見よ。名古屋を見よ。テレビやメディアが「辣腕政治家」として取り上げる連中はみな同じようなキャラクターだ。ゴロツキのような連中が政敵や反対勢力をダミ声で攻撃することが政治であるとされ、安倍晋三のように内閣総理大臣でありながら閣僚席から国会議員に対してヤジを飛ばす分を弁えない無礼な人間こそを「改革者」として持て囃すことが通例となっていた。およそ自分の会社にいるはずのない、まともに会社勤めなど続きそうもない、下品で無教養な人間こそが政治の世界では栄達するという相場感が、この10年で出来上がってしまっていた。  そこに岸田文雄が総理に就任した。自分の会社にもいそうな、近所にもいそうな、そして良き社会人でありそうな政治家が総理になったのである。人の話を聞き、手元の紙を読まずとも正しい日本語で会話ができる最低限の知性を有した人物が総理に就任した。この10年間の相場と大違いではないか。この10年で出来上がった相場から有権者はそこに驚いているのだろう。驚きのあまり、“ご祝儀”を払い忘れてしまっているのだ。
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枝野が悪い、共産党が悪い、山本太郎が悪いでは野党は勝てない
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月刊日本2021年11月号

【巻頭インタビュー】議会は民主主義の砦だ 衆議院議長 大島理森
【特集1】傀儡政権の耐えがたい空虚
【特集2】政治と一体化する警察
【特集3】原敬暗殺100年 いま原敬から何を学ぶか


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