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内閣官房のモニタリング検査、評価できる点もあれど、目的は果たせていなかった

第6波の発生をモニタリング検査は検知出来たか

 市民に好評なモニタリング検査ですが、あくまで目的は、新たなエピデミックSurgeの発生など、エピデミックの重大な変化を早期検知するための事業です。  筆者は、10月末から11月上旬にかけて首都圏と北海道、中国で第6波の発生を示す統計の挙動が発生していると指摘してきています。現在、筆者による11月執筆の既報やメディア報道*のように第6波エピデミックの疑いが論じられています。 <*東京で第6波の兆候が…岸田首相「コロナ対策最優先」は看板倒れ、PCR検査拡充“条件付き”に後退2011/11/15日刊ゲンダイAIが第6波予測、東京ピークで370人? 専門家は警戒呼びかけ2021/11/19 毎日新聞>  それでは内閣府と東京都が別個に実施しているモニタリング検査は、兆候を把握出来ているのでしょうか。今回は、このことを統計から評価します。

内閣府モニタリング検査と日毎新規感染者数・検査数統計を比較する

 それでは、内閣府モニタリング検査と実際の統計を比較してみましょう。先ずは14都道府県合計と全国合計です。  本来は、新規感染者数統計も14都道府県合計に統一すべきですが、公開されている都道府県別PCR検査数の統計に欠陥があるために全国統計を使います。
内閣官房モニタリング検査14都道府県合計

内閣官房モニタリング検査14都道府県合計/検査陽性率(青ppm, 片対数)左軸 /検査数(赤 件 線形)右軸/<出典:内閣官房

日本全国の新規感染者数とPCR検査数、検査充実率2021/2/15〜2021/11/22

日本全国の新規感染者数とPCR検査数、検査充実率2021/2/15〜2021/11/22/新規感染者数(青,ppm, 片対数, 左軸) NHK集計データ/PCR検査数(赤, 件, 線形, 右軸)厚労省オープンデータ/※検査充実率は、新規感染者数/検査数で位相を1日補正してある

 内閣府モニタリング検査14都道府県合計を見ると、一週間の積算集計であるのですが、厚労省集計の全国PCR検査数の1/20〜1/10程度とかなり大規模に行ってきたことが分かります。  そして、検査規模が不足しているために定量的比較は難しいのですが、定性的には新規感染者数統計と内閣府モニタリング検査には類似性が見られます。検査規模を10倍の週70万検査にし、運用法を改善すれば強力な早期探知手法となった可能性があります。  しかし11月に入ると内閣府モニタリング検査の規模がたいへんに小さくなってしまいました。これは菅内閣から岸田内閣に移行したために内閣府モニタリング検査の規模が縮小してしまったことが理由です。内閣モニタリング検査は、既に団体の募集を中止しており、12月で終了となります。  このため11月以降、検査規模が約1/10となり、誤差が3倍以上となりました。結果、11月は検査過少で計測不能、数値が出ても有意差が見いだせません。あと2ヶ月事業規模を継続していれば、傾向だけでも第6波の発生が分かったかもしれないだけに惜しいことをしました。  まさに「継続は力なり」ですが、事業縮小で何もかもパァです。結局第6波の前兆は見えていません。また全国統計でも第5波減衰が衰えていますが、これも内閣府モニタリング検査では分かりません。
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裏目に出た事業縮小
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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