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内閣官房のモニタリング検査、評価できる点もあれど、目的は果たせていなかった

目的を達成出来なかったが貴重なデータを得たモニタリング検査

 内閣官房モニタリング検査、東京都モニタリング検査共に市民に公表ではありますがエピデミックの変化、とくに新たな波の発生を早期発見する役には立ちませんでした。これは筆者が10月に執筆した既報に書いた通りの理由で、数学的に当然のことです。  一方で未発症の市中感染者の濃度が、日毎新規感染者濃度の約100倍程度であるということがモニタリング検査からわかりました。これは、IHME(保険指標評価研究所) などの推定から計算出来る倍数と一致しており、防疫上の貴重なデータとなっています。また若年層の感染率が目立って高いなど前出の10月執筆既報でご紹介した貴重な数値が得られています。この数値が実測され且つ公開されてきたことは画期的です。
内閣官房モニタリング検査 年齢層別検査陽性率(‰, 片対数)

内閣官房モニタリング検査 年齢層別検査陽性率(‰, 片対数)<出典:内閣官房

 また無症状の人に限定して検査をしたことによって不顕性感染者の濃度、分布を知ることも出来ました。このことは世界的にも珍しい公開データであり筆者は極めて高く評価しています。検査関係者は、誇って良いと思います。  しかし目的は達成出来ませんでした。  第5波減衰過程から見た終息過程における市中感染者濃度は、10ppmまで検出出来ると新たな波を早期検知出来ますので一週間あたり全国で70万検査あれば辛うじて傾向が見えると考えられます。実用精度を得るには一週間あたり700万検査で全国展開すればよく、これは唾液検体PCR検査で十分実現可能です。また検査充実率(TCR)が収束過程で1万の桁となりますのでウイルスの制圧、ゼロ・コロナも実現可能となる基本条件の一つを達成出来ます。  約10ヶ月間の事業でモニタリング検査のノウハウは得られましたし、費用もたいしてかからないことは明確となりました。全都道府県に展開し、一週間あたりのサンプル数700万を目指して街頭・郵送一般検査および団体検査をすればエピデミックの現状把握を迅速に出来ますし、台湾と同様に国内ゼロ・コロナを達成し、社会・経済活動の再生が可能となります。当然ですが、この事業を拡大しても医療への負担はなく、むしろエピデミック Surge を未然に探知・制圧することにより医療崩壊を未然に防げます。 <文/牧田寛>
まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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