仕事

「前の職場では〜」を連呼する社内の嫌われ者。どの職場にもいる“転職出羽守”の実態とは

意気軒昂な若手出羽守の弊害

 過去の栄華にしがみつくおっさんほどみっともない者はいない。だが、身の程をわきまえずに強引な改革を訴える若者もまた迷惑である。ネット系広告代理店で統括ディレクターを務める40代の男性は、大手企業から転職してきた若者に頭を悩ませた話をしてくれた。 「まぁまぁ大手のIT系企業A社から転職してきたヤツ(20代後半・男性)は、何かにつけて『A社にいた頃はもっとスピード感を持ってみんな仕事してました』とか『A社の仕事の進め方って〜』と言ってくる。最初の頃はウチに比べて大手で仕事してたわけだし、なるほどなぁって思ってた。でも、入って半年も経たない頃に突然『業務改善の提言』と題して、所属部署の改善点をわざわざパワーポイントでまとめたものをSlackに上げてきた」  察しがつく読者の方はおわかりだろうが、その内容はほとんどがA社の事例を引き合いにしたもので、これには皆、閉口してしまったという。 「さすがに首根っこ摑んで『いい加減にしろ!』って言おうと思ったら、若手の女子社員が『A社がとても素晴らしく先進的だと言うことはわかりました。●●さん、A社に入られてその先進的な取り組みの元、お仕事を進めてみてはいかがでしょうか?』って返信したんですよ。この書き込みにみんな賛意を示すスマイルのスタンプや中にはクラッカーが鳴ってるスタンプが押されて、お祭り状態になった(苦笑)」  その後、社内で孤立した彼は辞表を出してひっそりと辞めていったという。

引き抜かれた出羽守の末路

 実は筆者も出羽守に出会ったことがある。以前、筆者が勤めていたA社という中堅規模の出版社にK君という編集者が入社してきた。筆者のいた会社よりも規模の大きなX社という出版社で編集をしていたのだが、役員の肝煎りでヘッドハンティングされて入ってきたのであった。  K君は確かに仕事はできた。そんな彼からすると当時、筆者がいた編集部はぬるま湯そのもの。ことあるごとに「ホント、ぬるいよ」と悪態をつき、「X社だとさぁ〜」や「A社がX社に追いつけない理由が入社してよくわかった」が口癖という、絵に描いたようなイヤなヤツだった。  とはいえ仕事はできるし、自分たちよりも規模の大きな媒体をやっていたことや役員の肝煎りで入社した手前、上司ですら意見が言えない雰囲気になってしまった。入社から1年半ほどが経つと「オレがいないと、この編集部は回らない」とまで言うようになっていたであった。
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独立後に落ちぶれる出羽守
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グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

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