更新日:2023年01月24日 19:46
スポーツ

門田博光・74歳は今も闘い続けている。稀代の豪打者を襲う“病魔と孤独”

門田は、闘っている

 一九九二年に引退しユニフォームを脱いだ門田は、他の一流選手が引退後に進む道と同様に解説者や評論家活動を始める。現役時代の不遜なイメージとは裏腹に、物腰柔らかなユーモアたっぷりの解説は評判を呼び、門田博光ここに健在と知らしめるほど精力的に活動していた。だが、引退して五、六年たっても指導者としてユニフォームの袖を通すことはなかった。  やがて門田の身体に異変が起こる。普通に歩いているとなんだか違和感を覚え、足がうまく踏み出せない。「ゴルフでもやっとれば治るだろうと思ってほっといた」と運動不足だと思い呑気に過ごしていた。しばらくたっても体調は芳しくなく、さすがに病院に行くと、血糖値が500弱の数値を示し即刻入院を命じられた。 「現役時代、シーズン中は酒を飲まなかったけど、オフになるとしこたま飲んだ。引退してからは毎日がオフ。休みの日は二時間おきに飲んでいたこともあった。家の一升瓶は二日でなくなるし、飲み屋に行ったらビールの中瓶を二〇〜三〇本ほど空けとった」  現役時代は節制を重ねて四四歳までプレーした。しかし引退すると大好きな酒を浴びるように飲み、そうしたツケがたたったのか糖尿病が発覚した途端タガが外れたように次々と病気が襲ってくる。
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頭をハンマーで殴られたような痛み
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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