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「ウクライナ侵攻」が加速させた、世界の分断と先鋭化

日本人には見えない「世界」

 忘れてはならないのは日本はグローバルノースであり、多くの情報はグローバルノース向けに作られていることだ。たとえば世界の多数がプーチンを非難し、ウクライナを応援していると思っているが、実際はそうではない。世界人口の多数はロシアの国連人権理事国資格停止で賛成票を投じた国には住んでいないし、対ロシア経済制裁に参加している国にも住んでいない。国の数でも、そこに住んでいる人の数でも多数派は、反プーチンでもウクライナ支持でもない。はっきりとプーチンを非難し、ウクライナを擁護しているのはグローバルノースの国々だけなのだ。グローバルノースの日本にいると、それが世界の多数派のように見えてしまう。
グローバルノース

ロシアの国連人権理事国資格停止で賛成票を投じた国と、対ロシア経済制裁に参加している国を世界地図に反映すると、世界の半分(よりむしろ少ないくらい)でしかないことがわかる

陰謀論や極右コミュニティに浸透するロシア擁護論

 さらに、反プーチンの国、たとえばアメリカに住んでいる中にも親ロ派は存在する。QAnonのような陰謀論や白人至上主義、極右、反ワクチンなどの反主流派のグループの多くはプーチンを支持している。コロナ禍でロシアがせっせとワクチンにまつわる陰謀論を発信してきた成果だ。そのおかげでウクライナ侵攻と同時に、こうした反主流派のグループは一斉にロシア擁護、反ウクライナの情報を発信しはじめた。  そして、これらのグループは決して少数派ではない。2022年6月22日に公開されたマイクロソフト社のレポートによると、ロシアから発信される陰謀論などのメッセージは、大手メディアに匹敵する浸透力となっていたことがわかった。  アメリカ成人の26%はアメリカがウクライナにバイオラボを設置していたというロシアの陰謀論を信じていたという調査結果もある。  また、共和党の4人に1人がQAnon信者(25%)で、QAnon信者は共和党を肯定的にとらえる割合が高い。
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加速する分断と先鋭化。そしてそれを煽るもの
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ウクライナ侵攻と情報戦

海外研究機関の各種報告から読み解く、現代の情報戦最前線と民主主義の危機とは?

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