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鳥飼茜『ロマンス暴風域』で描いた男への反発「風俗に行けば純愛できるなんて」

「オツ」が伝わらないかもしれない

ドラマイズム『ロマンス暴風域』
MBS/TBSドラマイズム枠にて7放映中
MBS:毎週火曜24:59~/TBS:毎週火曜24:58~
配信:TBS放送後、TVer、GYAO!、MBS動画イズム見逃し配信1週間あり
©「ロマンス暴風域」製作委員会・MBS

――読者からの感想で印象に残っているものは何ですか?  実際に風俗で働いている人だと思うんですけど「『ロマンス暴風域』のドラマを観て、風俗で純愛できると思って勘違いするバカが増えるからやめてほしい」という意見があって、思わぬ反応でした。風俗に行けば純愛できるよなんてことは、私も思ってもないことなので。    それで思い出したのが、海外のインタビューで『先生の白い嘘』というレイプを扱った漫画について聞かれたときのことでした。「性暴力を肯定するようなキャラクターやセリフを描くのはなぜか」と質問されたんです。どういうこと?って意味を聞いたら、「だってあなたはそれを賛同してないでしょ。なのに、なぜ反対の意見を書くんですか」って。  私は全然意味がわからなくて。要するに「それを読者があなたのメッセージとして受け取った場合、どうするんですか」「肯定してるように感じてしまうんじゃないですか」ってことなんですね。「肯定すべきじゃない犯罪者の道理をなぜそこまでつまびらかにするのか」という問いに近い。  そんな可能性は考えたこともなかったので、本当に驚きました。漫画って、自分と同じ考えの人ばっかり出てくるものなの? そんなわけないじゃないですか。私は、自分とは対極の人をガンガン登場させて、読んだ人に選ばせたいんです。「いや、こいつねぇわ」という反応も織り込み済みで描いていて、私が持っているメッセージが「こいつねぇよ」ってこともあり得ますし。そういう現象そのものを俯瞰して描いています。  でも同じようなことを他の人にも聞かれたこともあったので、もしかして最近の人ってそうなのかなって思うんですよ。キャラクターの発言イコール私が持っている考えだと思うんだって。そういったインスタント性みたいなものは、少し怖いなと感じてます。私としては、どう向き合っても風俗業は肯定しきれないし、受け入れがたいものがずっとあるんです。でも理解を諦めたくはない、だから描く。
漫画『ロマンス暴風域』/好評発売中

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『ロマンス暴風域』は、風俗で純愛だと勘違いした男性と、勘違いなのかどうかギリギリを攻めてきた風俗の女性の攻防戦を「オツ」なものとして描いたんです。でも、その「オツ」が伝わらないかもしれないという不安は少しあります。ドラマの脚本ではその辺も上手く書かれると思うんですけど、観た人がどんなふうに受け取るか興味がありますね。結局、出会う場所が風俗であれ、どこであれ、好きになった人は負けなんですよ。負けだからって終わりじゃない、負けの中にも「オツ」はある。そういう話だったと思うんですけどね。 <取材・文/ツマミ具依 撮影/山田耕司>
企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_
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