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アントニオ猪木黒幕説も…「1999年の不穏マッチ」凶行を巡る“当事者の証言”

序盤から明らかに「プロレス」ではなかった

 異常な光景の中で夕刻に試合開始のゴングが鳴った。小川は明らかにプロレスをするつもりはない。序盤に繰り出した右ジャブからの左ストレートの切れ味を見てもわかる。  橋本は小川の意図を察しながらも、プロレスラーとしての責務を全うしようとした。橋本は「試合を止めてくれ」という無言の意思表示をするために唐突にタイガー服部レフェリーに暴行するも、試合は終わらない。  小川はテイクダウンを奪い、マウントポジションを取るとパウンド、さらに橋本の顔面に肘を落とす。鼻血を出しながら立ち上がる橋本に小川の猛攻は続く。橋本はここでスタンディングで組み付いた状態をブレイクしようとする服部レフェリーの腹部に「止めてくれ」という合図を込めてヒザ蹴り。服部レフェリーは悶絶してダウンするも、ゴングを要請しない。  服部レフェリーが倒れている状況で、小川は再度マウントポジションを奪うとパウンドを繰り出し、うつ伏せになった橋本の頭部を蹴り飛ばし、踏みつけた。橋本はリング外にダウンし立ち上がれない。会場が騒然としている中で、セコンド陣が乱闘を始めた。

ノーコンテスト裁定後も収まらない大乱闘

 リング外にいた服部レフェリーが立ち上がり、ゴングを要請。試合はノーコンテスト裁定。不穏な空気が漂う中、小川は火に油を注ぐように「もう終わりか、おいおいおいおい、冗談じゃねぇよ! 新日本プロレスのファンの皆様、目を覚ましてください!」とマイクで叫ぶ。  その後も延々と大乱闘が続く。佐々木、中西がリングに上がり、橋本のセコンドについていた温厚な山崎一夫がブチキレ、自身の師匠・佐山に突っかかり、いつの間にか平成維震軍の小原道由まで乱闘に参加している。  そして現場監督・長州が登場し、小川に「これがお前のやり方か」と詰め寄り右ストレートを見舞う。場外では飯塚高史と村上一成(現・和成)の殴り合いが勃発し、下になった村上の頭部を飯塚が踏みつけると、新日本のセコンド陣が次々と攻撃。KOされた村上は一時意識を失うほど危険な状態となり、担架で運ばれ、病院に搬送された。  釈然としない状況に場内にはブーイングと罵声、モノが飛んでいた。
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小川の暴走の裏にはいったい何があったのか?
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プロレスやエンタメを中心にさまざまなジャンルの記事を執筆。2019年からなんば紅鶴にて「プロレストーキング・ブルース」を開催するほか、ブログnoteなどで情報発信を続ける。著書に『俺達が愛するプロレスラー劇場Vol.1』『俺達が愛するプロレスラー劇場Vol.2』『インディペンデント・ブルース』(Twitterアカウント:@jumpwith44

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