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奨学金を借りた人々を取材して見えた「借りないとどうしようもなかった」人の多さ

「奨学金を借りないとどうしようもなかった」と語る人の多さ

奨学金千駄木:取材した方々の共通点で言うと、高校の頃とかに家庭環境で苦労して奨学金を借りた人たちなので、お金を稼ぐことに対して貪欲な傾向もありました。皆さん絶妙にオラついているというか、ハングリー精神が強めです。やはり高校を出て金額のイメージもよくわからないまま、何百万円も奨学金を借りるって酷な話ですよね。 ――ある種のマネーリテラシーは身に付くでしょうね。ただ、必ずしも大卒だけで将来を約束されないご時世で、取材対象者の方々に生存者バイアスがかかっている可能性もなくはないような。 千駄木:本当は奨学金以外の選択肢があるといいのかもしれませんが、学費ローンなどは第二種より金利が高いので、結局、厳しい境遇にある人はJASSOしか貸し手がいないのが現状です。借りないに越したことはないものの、奨学金を借りないとどうしようもなかったと語る人の多さに驚きました。

返済が滞るとブラックリスト入りも……

――奨学金で悲惨な目に遭い、後悔されているような事例だとどういったものがあるんでしょうか。 千駄木:大学院に入り直すために奨学金を借りた人は取材しましたね。40歳になってようやく准教授になった方で。大学の教授って奨学金の返済を免除されるんですが、学閥争いで勝手に負けてクビを切られた結果、50歳から急に毎月2万円の返済がスタートしたと。あとは実際に返済が3ヶ月遅れたことで、ブラックリストに載った人も何人かいました。その一人は妻子持ちで上場企業に勤めてある程度の年収もあるのに、住宅ローンは組めないし、クレカも使えず、普段はずっと現金払いだとか……。 ――いま現役生で奨学金を借りている人が少なくとも100万人以上いて、自己破産する返還者が0.05%という数字は、どう受け止めれば良いんでしょうか。苦労はありつつ、99.95%はなんとか返せているということだとは思いますが。 千駄木:奨学金が大卒カードを授けてくれたから、奨学金を借りられてよかったといった発言はよく聞くので、現実的な議論としては高校生には奨学金を借りることを過度に恐れないでほしいです。何かを諦める前に必要な分は最低限借りるべきだと思います。病気・怪我、失業や育休でも申請すれば奨学金の返済は猶予してもらえるので。けっこうな確率で皆さん1回くらいは奨学金の返済を猶予してもらっていますが、地道に働いて返す前提の意識でいれば、そうそう後悔することもないのかと。 取材・文/伊藤綾
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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