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純利1兆円超え。トヨタはなぜ復活できたのか?“EV出遅れ”を挽回する5つのシナリオ

復活の鍵を握る電気自動車開発

 トヨタが投資家からの評価を回復させた理由は直近の業績が好調ということだけではありません。将来的なより大きな成功への期待感が高まっているということも大きな要因となっています。  多くの方がご存知の通り、日本企業は海外と比べると電気自動車の開発が遅れています。2022年の電気自動車販売台数はテスラが約131万台に対し、トヨタは約2万4000台と差を付けられています。当然、他のテスラ以外の海外自動車メーカーとの差も大きなものです。  投資先を選ぶならば、電気自動車の開発が遅れているトヨタよりも海外自動車メーカーと投資家が考えるのは自然な流れです。この開発の遅れがPBRの1倍割れの原因としてありました。  こういった背景がある中で、トヨタは6月12日に次世代バッテリーを投入した電気自動車の投入を発表しました。次世代バッテリーでは航続距離1000km(東京から北九州くらいの距離です)を実現するほか、急速充電は20分以下となるという予測が出されています。また、新型バッテリーの他にも、作業工程が抜本的に改善されることも同時に公表されました。  発表から程なくして、PBRは1倍に回復。  電気自動車の普及が進んでいないことはトヨタの、ひいては日本の自動車メーカーの大きなマイナス材料となっています。そんな中でトヨタの取り組みが電気自動車業界の勢力図を変えるのではないかという期待が持たれているのです。

CO2を出さない水素の精製技術

 そして、水素戦略も引き続きカギになります。  昨年12月に、西村経済産業相がサウジアラビアに訪問し、水素生産本格化に向けて、日本と協力関係を強化しています。今年、7月16日には、岸田首相がサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、脱炭素社会の実現について合意に至っています。  サウジは石油依存からの脱却を図っており、燃焼時にCO2を出さない水素などの精製技術に関心を高めています。サウジアラビアは安価に水素を生産できる国だとも言われていますので、水素に力を入れるトヨタとして、重要な国に位置します。国としても戦略的に、サウジアラビアと手を組んでいます。
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不安材料は中国市場の動向
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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