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「おたくの息子さんは人間のクズ」…他者を見下す両親と縁を切った50代女性の告白

ついに両親と縁を切ることに…

 婚約者と聞いて思い出すエピソードこそ、槇原氏の両親を語るうえで最も象徴的だ。 「婚約者を連れて挨拶に行ったときの話です。その日は婚約者も両親も趣味の話で盛り上がり、打ち解けた様子でした。婚約者もホッとした様子で『聞いて想像していたご両親よりも穏やかだった』と話していましたが、私は内心不安でしかありませんでした。  案の定、婚約者がその席で約束したものを両親に郵送したところ、『あなたのような方からいただくいわれはありません』との言葉とともに受け取り拒否で突き返されました。この件は双方の両親を巻き込む形になりましたが、結局、私の母が『おたくの息子さんは人間のクズ』などと詰ったことで先方を激怒させ、私は両親と縁を切って嫁ぐことになりました。ですから当然、結婚式には両親を呼びませんでした。バージンロードも親戚のおじさんと歩きました」

「選民意識」が根底にあった?

 槇原氏は、この両親の暴挙について一つの仮説を立てている。 「国家公務員であることが誇りでしたから、官が上で民が下であるというある種の選民意識があったと思います。両親の思い描いていたストーリーとしては、『それでも娘さんをください』と頭を下げに来るはずだったのではないでしょうか。とにかくプライドが高く、他者を尊重できないところがありました」  それはこんな場面にも見受けられる。 「両親と買い物に行った際、会社の同期とその家族に出くわしました。私の両親は離れたところにいたので、呼びに行って挨拶しようと持ちかけると、『いや、どうして私たちが行かなければならないの? あちら様が来なさい』と。私は情けなくなって、同期には『ごめん、見失っちゃった』と嘘をついてその場をやり過ごしました」
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小学校3年生の頃に「苦しみの原体験」が
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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