ライフ

工業高校志望から難関大学に合格。「高校出たら働くのが当たり前だと思っていた」

授業中に誰もしゃべらない教室が新鮮だった

教室

写真はイメージです

 筆者が今回のインタビューで印象に残っている言葉があります。それは、「勉強と大学が自分からは見えなかった」という言葉です。「勉強して、どうする」「大学に行って、どうする」と考える以前に、それらが自分とは一切関係がないところにあるように感じられていた。「勉強なんてしたくない」と反抗することすらなかったというのです。  進路指導前の友人との会話を経て、「どうも自分は大学に行ったほうがよさそうだ」と気が付いた高井少年。ですが、大学に行って何をするのか、そもそもお金がいくらかかるのかも分かりません。奨学金という制度すら知らなかったのです。  それでもいろんな人に相談した結果、大学に行くと決断します。親からは「自分たちには大学のことなんて何も分からないから、これから先のことは全部自分で考えて決めろ」と言われたのだそうです。独り立ちの瞬間でした。 「高校受験に備えて、初めて勉強をしたんです。通っていた中学校はひどい状態で、廊下を原チャリが爆走したり、授業中に教室で野球してたり……窓ガラスなんていつも割れてましたしね。でも、中3になった頃にはヤンキー連中がそもそも学校に来なくなって。大学に進むと決めた夏くらいから勉強を始めてみたら、成績はぐんぐん伸びて、愛知県立中村高校という、当時としてはそこそこの進学校に受かったんですね」  中村高校に進学して、衝撃を受けた高井さん。それは、「授業中に誰もしゃべっていなかったから」でした。みんな予習してきているのも、カルチャーショックだったそうです。  授業中は勉強に集中するようになりましたが、家庭学習の時間はほぼゼロだったとか。兄弟三人とも「自宅学習」という習慣が全くない家庭で、勉強机を持ったこともなかったからです。常に授業の進行の一歩先を行く「授業内予習」という技を身につけ、授業にはついていくことができたのだと言います。  中学時代から続けてきたバスケ部の活動が終わり、3年生の夏休み前にようやく「受験生」になりました。志望校は名古屋大学。理由は簡単で、実家から通えて学費が安いから。逆に言えば、他の大学に行く余裕はなかったということでした。

センター試験対策はほぼ音読でカバー

 名古屋大の過去問を調べ、自分の実力や得意・不得意を考慮して、「合否は数学の出来次第で決まる」と判断した高井さんは、夏休みのほとんどを数学漬けで過ごし、一夏でそれまでの遅れを取り戻したといいます。  数学以外の教科の勉強方法は基本「音読」だったそうです。長年、机に向かって勉強する習慣がなかったためで、世界史、英語、生物などセンター試験(いまの共通テスト)の対策はほぼすべて音読でカバーしたそうです。  二次試験の高度な数学など一定以上のレベルの勉強には、実際に手も動かして思考法を血肉にする作業が必要ですが、センター試験対策の詰め込み型の情報処理を問われるような問題であれば、音読で十分攻略できると言います。  最後に高井さんの「受験勉強は走り高跳び」という持論を紹介します。 「走り高跳びって、体がバーを越えるときにも、重心はバーの下を通過しているんですね。本当の実力(=重心)がバーの下をくぐってようと、その一瞬の成績(=体)がバーをすれすれクリアすればいい。そう考えると、実力の底上げだけでなく、スポーツのように『ピークの作り方』にも意識が向かうのではないでしょうか」  高井さんが7月に開設したYouTubeチャンネルは既に登録者数は7000人を超えようかとしています。ここまでの勢いで伸びるチャンネルは中々ありません。YouTuberとしての高井さんの活躍も今後、注目です。 【詳しくはこちら】⇒「元日経新聞記者・高井宏章に聞く!『仕事を辞めてまでやりたかったこと』とは?」はこちらへ
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa

東大式節約勉強法東大式節約勉強法

目標達成のための最短ルート、最小コストの具体的な方法が満載


人生を切りひらく 最高の自宅勉強法人生を切りひらく 最高の自宅勉強法

週3バイトしながら東大に合格した著者が明かす「最高の勉強法」


東大合格はいくらで買えるか? (星海社 e-SHINSHO)東大合格はいくらで買えるか?

東大生100人調査でわかった教育投資の正解 (星海社 e-SHINSHO)

1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ