更新日:2024年12月06日 18:46
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歌舞伎町のホテルから飛び降りた16歳の“トー横キッズ”。亡くなる直前に語った「壮絶な過去」と「大人への絶望」

児童相談所は「地獄。嫌になる」

 彼女にODをする理由を尋ねると、「シラフでいるときっかけがなくても落ちこむ。昔のフラッシュバックとかで……」と力なく笑った。実際、ネットでは「パキッた」状態のトー横キッズたちの姿が多く拡散されている。呂律がまわらなかったり、暴言を吐いたり、床にへたりこんだり。彼女たちを面白おかしく「ネタ」として消費する人たちは、ただ「クソガキ」と笑って、蔑んだ。  Sちゃん自身、このままでは駄目だと、なんとなく理解していたという。だから彼女は、「お酒や薬が良くないことは知っている」と話す。だけど辞められないのだ。それ以外に心を鈍らせる方法が見つからなかった。  学校にも、いつのまにか通えなくなる。兄の暴力は収まらず、助けてくれるはずの母親はそれを打ち明けたSちゃんに暴言を吐き、ある日“彼氏”と一緒に家を出ていった。Sちゃんはその直後にトー横で補導され、児童相談所に保護されることになる。周りの大人に兄のことを訴えたが、「証拠がないから」と取り合ってもらえなかった。結局2年間、児童相談所で過ごしたのち、「親のもとには帰せない」と判断され、最終的には親戚の家で暮らすことになった。 「家の人には遠慮してるし、家に居場所があるわけじゃない。家族ってわけじゃないから。だけど変なことをするとまた児相に送られるから、門限は守ってる」 ――児相は居心地が悪い? 「地獄。テレビとかもないし、毎日ラジオ体操とかもやらされる。嫌になる」

ボランティア団体って…

大久保公園 Sちゃんは「もう児相には戻りたくない」と話す。だから今は補導を避けるため、前のようにホテルに泊まったりしない。夜中には出歩かず、門限の前に電車で家へ帰る。だけどやっぱり、トー横に通うことはやめていない。 「来ないで1人になると落ち込む。私はリアルにいる自分より、トー横にいる自分が好き。トー横の自分でありたい」  Sちゃんと話すうちに、私たち大人が彼女にできることはなんだろうと、答えが見えなくなる。彼女たちの居場所をただ取り上げて親元にかえすことだけが、「正義」だとは思えない。 ――ボランティア団体の人たちとかって、助けになってる? 「うーん。子ども食堂とかは行くけど、ネットに無断で顔をあげたりされるのがいやだ」 ――許可なく載せられるってこと? 「そう。TikTokとかに。親が子供を見つけられるように発信してるんだって言われるけど、正直怖い。私みたいに虐待されてる子も多いし、親に居場所を知られたくない子もたくさんいるから本当は辞めてほしい」 ――そうか。嫌だって直接言ってみた? 「ううん、言えない。だけど私たちの動画を勝手に撮って載せてバズって、自分たちがいちばんお金儲けのネタにしてるじゃんって思ってしまう」
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トー横は居場所「なくなってほしくない」
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厚生労働省が自殺防止のためホームページで紹介している主な相談窓口は次の通り。
▽いのちの電話
(0570)783556(午前10時~午後10時)
(0120)783556(午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▽こころの健康相談統一ダイヤル
(0570)064556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▽よりそいホットライン
(0120)279338(24時間対応)
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