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コンビニ店長が「地獄」に感じる瞬間。お釣りが払えず…1円玉が切れて禁断の手段も――コンビニの困った客トップ5

1円玉が切れたあの日……おつりが出せずに大混乱

1円玉

1円玉は他の金種では代替がきかないため、絶対に切らしてはならない

 ある日、私は人員不足のオーナー店に応援に行っていた。私が勤務していたコンビニチェーンでは直営店勤務の本部員がどうしてもシフトに穴が空いてしまうオーナー店の応援に入ることがあった。  本部員の応援を頼むほどだ、よほどテンパっていたのだろう。その店は掃除も行き届いておらず、発注もできていないのか在庫はスカスカ。それでも駅の改札前にある店とあって、ひっきりなしに通勤・通学のお客様が来店していた。  朝8時からのシフトに入っていた私は夜勤スタッフとバトンタッチし、レジに入る。しかし……1時間もしないうちに恐ろしいことに気づいた。小銭の準備が全く追いついておらず、棒金はもちろん金庫にもないし、レジが4台あるにも関わらず、全てのレジの1円玉が間もなく切れそう……。しかしひっきりなしに来店する客の多くは千円札でお茶やガムを数点購入する客ばかり。銀行に両替に行く人員の余裕なんてない。むしろレジの人数が足りていなくて納品された商品は放置されているし、むしろレジ4台のうち2台しか稼働していない(2人しかいないから!)……だから私が応援に呼ばれたのだ!  そしてその時は来た。1円玉が切れたのだ。しかし当然おつりを返さなければいけない状況はやってくる。まず私が思いついたのはレジ横に設置された募金箱の中にある1円玉をレジ内のお金と両替しながら使うこと。しかし、その作戦もむなしく、1円玉はすぐに底をつきた。

追い詰められた私は…

 次に、自分ともう一人のスタッフの財布の中の1円玉とレジのお金を両替した。しかし、そんなに財布に1円玉は入っていない。即座に終了である。  そして追い詰められた私は……。 「すみません、いま1円玉を切らしておりまして、おつり38円のところ35円でもいいでしょうか?」  ……いいわけない! お客様も「はぁ?」という怪訝な表情をしている。そりゃそうだ。実は冒頭のセリフは、実際に私がお客様に言い放った言葉というわけだ。  最終的に、たまたま店の様子を見に来たスーパーバイザーが銀行に走り、両替をしてくれて事なきを得た。人生であんなに1円玉に泣かされたのはあとにも先にもこれっきりである。 <文/松本果歩>
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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