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「ブスだから学歴をつけなさい」と言われて育った29歳女性が、相容れない両親と“和解”するまで

両親に「ブス」と言われ続け…

 自分の考え方と合わない場合、両親は実力行使によって容赦なく板橋氏を“軌道修正”したのだという。そのためには言葉の暴力も躊躇なく駆使した。 「小さい頃から、『あなたはブスなんだから、まともな旦那さんにはもらってもらえない。だから勉強して学歴をつけなさい』とよく言われていました。そんなことを言われなくてももともと勉強は好きだったのですが、当時の私は、『そうか、私ブスだから勉強すれば良いのか』と素直に思っていましたね。また、年頃になると親が買った地味な服ではなくて、自分で選びたくもなるじゃないですか。けれども、『ブスなのに、色気づくな』と言われたり……ひどいですよね(笑)」

彼氏と出かける日に「小遣いを没収された」

 思春期になれば男女交際もあるが、両親は不機嫌さを示すことによって、板橋氏が高校生活をエンジョイすることも阻んだ。 「高校のときに彼氏ができたとき、親に報告したのですが、明らかに不愉快そうな顔をしていました。当時の彼氏が家族旅行で買ってきてくれたお土産に対して、父親は『俺はこんなもの食わんぞ!』と言っていましたね。実際、食べていませんでした。辛かったのは記念日を彼氏と一緒にお祝いしようとしていた日のことです。彼氏と出かけるのを知った母親から小遣いを没収され、出かけられませんでした。実質的な自宅監禁です(笑)。でも当時はそうした事情を彼氏に言えなくて、彼氏からも拗ねられたりして、板挟みでした」  両親の「とにかく自分たちが考える安全な範囲に留まってほしい」という思いは、たとえばこんな些細な一幕からも伺える。 「成人式のときのことです。見栄っ張りな両親は例によって惜しみなく高価な着物を着付けてくれました。ただ、私の意見はすべて無視です。本当はもっと今風の着物を着て、髪の毛もおしゃれにしたかったのですが、年齢層の高そうな両親指定の店で着付けをして、地味な着物におしゃれさの欠片もない髪型で出席しました。あれは結構トラウマになっています(笑)」
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20時の門限が「男性がいたら18時」に
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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