更新日:2024年07月03日 17:43
仕事

「鰻の成瀬」社長が語る驚きの経営戦略「鰻に触ったこともないし、究極の美味しさも求めていない」

飲食への愛はないが、FCへの愛はある?

――僕もそうなんですが、経営者って社会に適合できないから自分で会社を起こしている(笑)。それで独立・起業するに至ったんですか? 山本:当時、多くのFC本部では、加盟店が潰れては契約を取っての繰り返し……。「スクラップ&ビルド」と言われ、働いていたFC本部もあしきFCといった扱いでした。成績も結果も出していたので、FCのサポートをすれば不幸になる人々が生まれてしまうのを、ある程度は防げると思ったんです。  ただ、一方で僕は、FC本部が加盟店の面倒を見ないから悪いとも、加盟店の努力が足りないから悪いとも思っていない。たいてい両方に悪いところがあるんです。 ――飲食への愛はないが、FCへの愛はある。でも、義理人情とは別物。結局、FC本部と加盟店が適正な関係を構築して、最適解の営業をすることがFCビジネスの成功……そう考えているだけなのでは?  山本:その通りです。僕、若干サイコパスなので、共感力が弱い(苦笑)。でも、僕、滋賀県出身なので、近江商人の経営哲学「売り手よし、買い手よし、世間よし」の“三方よし”には共感する。詰まるところ、それが一番合理的なんですよ。

目標は300店!達成の暁には売却も!?

エッジ_山本昌弘――欧州はウナギの輸出を禁止し、米国も捕獲規制を厳格化。中国の養鰻業者も歩留まりが取れず、撤退するケースが増えている。ウナギの供給不安がくすぶっています。 山本:養鰻場は「供給量を明示すれば、出荷する」と約束してくれているし、さほど悲観してません。現在はニホンウナギが主ですが、他の品種にもメニューを広げようと考えてます。 ――さらなる成長を目指して、出店の目標はどの程度? 山本:ひとまず300店を目標に置き、達成したときに市場が残っているか判断するつもりです。そもそもウチのオペレーションは簡単なので、すごくパクりやすい。だから、鰻の外食市場で勝つには、さっさとシェアを取ってしまえば競合は参入しにくい。そのための出店スピードなんです。 ――ほとんど報じられていませんが、「鰻の成瀬」自体、別のFCに加盟した業態ですよね。 山本:はい。現在のオペレーションも、別のFCの使用権を買いました。大元のFCは鰻を卸し、ウチはオペレーションや集客の後方支援を担っています。 ――ならば、今後、「鰻の成瀬」のバイアウト(創業者による事業売却)を考えているのでは? 山本:「鰻の成瀬」でFCビジネスを上がるつもりはないし、当然、考えてますよ。ただ、売却したFCが悪い状態にならないように思案している。加盟店が利益を生み、営業を続けられる環境を整えたら、初めて全FCの売却を考えます。    日本では急成長したFCの創業者が、事業を売り抜けて、加盟店のことなんて知らない……ということも珍しくない。でも、そんなことをしたら次の事業を立ち上げるときにメチャクチャ苦労するし、後ろ指をさされながら生きていくことになる。僕はそんな人生を送りたくないんです。 【Masahiro Yamamoto】 1983年、滋賀県生まれ。ECC、おそうじ本舗を経て、フランチャイズビジネスインキュベーションを起業。代表取締役。鰻の成瀬のほか、ドライヘッドスパの癒し~ぷ、療育専門の放課後デイサービス・ブロッサムジュニアなどはフランチャイジーとして運営を手がける 取材/永田ラッパ 構成/齊藤武宏 撮影/恵原祐二
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