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ラーメン業界“閉店ラッシュ”の中で店舗を増やし続ける「丸源ラーメン」。圧倒的な成長を可能にした強みとは

店舗経営に重要な「顧客生涯価値」とは?

④顧客基盤の盤石化  丸源アプリが好調でダウンロード数が、昨年末に250万を突破するなど、顧客の囲い込みにも成功している。市場の将来予測に基づくと、インバウンド効果は安定しているだろうが、人口減少や少子高齢化でラーメンの喫食人口の減少は回避できない。  新規顧客獲得のコストが高くなる中、既存顧客の来店を促し、その顧客が生涯にわたり自店で消費してもらえるようににブランドロイヤリティ(忠誠度)を高める「顧客生涯価値(LTV・ライフ・タイム・バリュー)」の取り組みをを実施している。その結果、囲い込んだ顧客に、強みである顧客提供価値を高めた施策を持続的に実施し、顧客満足度を高められている。 ⑤一体感のある現場運営力  丸源ラーメンは店に清潔感があり飲食店基本の衛生管理が徹底されており、快適な雰囲気の中で美味しく食事ができる。店に清潔感があり、快適な雰囲気の中で食べられる。Q(品質)S(サービス)C(クリンリネス)は飲食店にとって最も大切な管理項目であり、徹底しなければ顧客離反の元凶となるが、全く問題なく徹底されている。 「店は人なり」は労働集約型の産業である外食では強く意識しなければならない。人の良し悪しで、同じ看板・同じ商品・同じ運営マニュアルを使用しても、マーケット指数の差は別として業績に明確な差が出るものである。特に店長の仕事に対する姿勢や熱意・手腕・人格で各店に差がつくものだ。店の雰囲気やお客さんに向かっていく姿勢は本部から店を任せられている店長次第で大きく変わる。

今後は追加注文を促し、単価を上げる政策も

ビール

※画像はイメージです

 物語コーポレーションのラーメン部門は、中核である丸源ラーメンを中心にして、市場ごとに異なるブランドを展開して市場の棲み分けをし、本格的にラーメン事業を展開する体制は整備されている。各店舗の運営状態は、売上構成比は昼65%、夜35%くらいで、やはりラーメンだけに昼の需要が高いようだ。  しかし、丸源ラーメンは餃子や唐揚げなどの一品料理も充実しており、夜の時間帯に飲み客を誘致し、締めのラーメンを提供できれば、この構成比を変えることも可能だろう。現在、駅前立地への出店にチャレンジしているようだが、これを成功させるために、限りあるキャパシティを有効活用しなければならない。  客席回転率の向上が望める時間帯は別として、お客さんの滞留時間を延ばし追加点数を増やして客単価を上げるのも必要だ。ラーメンだけでなく、ちょい飲みセットを用意し、ビール、唐揚げ、餃子、逸品メニューなどの追加注文を促し、単価を上げられるような店舗政策が求められる。効果と効率の対立軸を考慮しながら、顧客満足に向けた政策が必要だろう。
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今後のラーメン市場から目が離せない!
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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