仕事

タイに渡って大麻農家になった男の挑戦。「堂々と大麻を栽培して吸うのが夢だった」

グリーンラッシュが日本にも迫る!

 グリーンラッシュは、嗜好目的での乾燥大麻の消費だけではない。 「ヘンプと呼ばれるTHC成分の低い産業大麻は、バイオプラスチックや建築の断熱材、車のボディに活用されます。また、ヘンプから採取される油はバイオ燃料に変換されます。大麻が、今後の環境ビジネスのけん引役として注目されているのです」  一方、日本ではこうした潮流に抗うように、昨年に大麻取締法が75年ぶりに改正され、新たに使用罪が盛り込まれた。厳罰化が一段と進んだように見えるが、矢部さんは今回の法改正に一定の評価を下す。 「これまで医療大麻を認めていなかったですが、改正で大麻由来の薬品の利用が可能となり、抗てんかん薬のエピディオレックスが承認される見込み。これは大きな一歩です」  期待をのぞかせる矢部さんだが、嗜好目的での解禁は程遠いと考える。 「いまだに世間の認識は覚醒剤と同等だし、総選挙でも全く争点になっていない。以前、野党の選挙関係者と話した際、『大麻を語ると票が落ちる』と言っていました。ただ、アメリカだって医療大麻解禁から嗜好大麻の合法まで20年かかりました。日本でも議論が深まればいいのですが」  世界でグリーンラッシュが席捲する中、日本は“鎖国”を続けられるのか。

世界各国の大麻規制の現状

日本……× 大麻取締法の改正で、12月から認可品のTHC含有率が大幅に引き下げられる見込みで、CBDショップでは現行品が販売できなくなる事態に直面している アメリカ合衆国……△ 州ごとに規制が異なるが、大統領選ではハリス・トランプ両陣営とも推進、容認の姿勢。「郊外では、高齢の顧客向けに送迎サービスを行う店もあるほど」(矢部さん) 中国……× 「アヘン戦争のトラウマで薬物へのアレルギーが大変強く、嗜好用と医療用は禁止されています。しかし、産業用は認められ、大麻耕地の面積は世界最大です」(矢部さん) ドイツ……○ 粗悪品や闇市場の一掃を目的に、制度を大幅に改訂。4月から18歳以上の嗜好用大麻の最大50gまでの所持と使用が合法となり、3株までの栽培も可能になった 韓国……× ’18年末に、東アジアで初めて医療用大麻については合法化。昨年の大麻関連製品の総収益は700億円以上に上るとのデータもあり、成長産業として投資が進んでいる ウルグアイ……○ 麻薬組織の資金源遮断を目的に’13年に世界で初めて嗜好目的での使用を合法とした。「合法化によって、麻薬犯罪が20%減少し、闇組織の衰退につながりました」(矢部さん) マレーシア……× 刑法犯への厳罰で知られる同国。200g以上の大麻を所持した場合、販売目的とみなされて死刑判決が下ることもあるほど厳しいが、’21年から医療大麻については認められた 【doscoiさん】 1986年生まれ、大阪市出身。15歳で大麻を経験し、その魅力に目覚める。岡山で米作を営んだ経験を糧として、タイで大麻栽培に挑んでいる 【ジャーナリスト・矢部 武さん】 1954年、埼玉県生まれ。ロサンゼルスタイムス紙記者を経てフリーに。著書に『世界大麻経済戦争』(集英社)などがある 取材・文/週刊SPA!編集部
1
2
3
4
5
6
おすすめ記事
ハッシュタグ